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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 ぎゅうっと、腕の中の背中を抱き締める。すぐに腕が伸びてきて邪魔だというように頭を叩かれた。痛くはないけどムカついたからもっと力を込めてぎゅっとする。今度はため息を吐かれた。
「……わざわざ叩かなくてもいいじゃん」
「あ゛?」
「……何でもない」
 思わず出た自分の言葉を嘘で否定した。何でもなくない。青峰は不機嫌でまた黙り込んでしまう。
 パラパラと雑誌が捲られる音がかすかに聞こえる。たまに手の甲に当たってむずむずしたけど動くのが億劫だから無視する。視線をずらすと青峰の耳がぼんやりと見えた。もう一度ぎゅっとしたいけど、そうしたら今度こそ振り払われそうだからやめる。
「いい加減にしろよ、お前」
 随分経ってから青峰が振り向く。動きに逆らわずにいると倒れて、胡座をかいていた青峰の膝に落ちる。ぽすってまた気の抜けた音がした。ごつい野郎の膝枕は絵的にどうかと思ったが、それは一瞬のことですぐに床に落とされた。
 強かに打った頭を横向きに動かしたら壁の時計が見えて、あれから一時間も抱き付いていた事実にちょっと感動した。雑誌を読んでいたとはいえ青峰はべったりされることが嫌いだからだ。もしかしたら、ぎゅうってしても怒らなかったかもしれない。そう思ったが、打ち付けた頭があり得ないと諭していた。
「聞いてんのか、おい」
 すっと視界に影が落ち、青峰の手が広がる。押さえつけるように頭を鷲掴みにされた。ぎゅうっとなる。
「ちょっ痛ってぇ! ちょっ、あーも、火神にいじめられた後なんだからそっとしといてよ!」
「はあ? 火神?」
「そう火神!」
「……」
 大分間違っているような気はする。気はするが、面倒だから黙っておく。いい加減こめかみが痛くて小さく首を振ると、青峰は不機嫌にもっと眉を寄せたけど手は離してくれた。何やら今日はやけに優しい。
「……青峰もさー、何であのタイミングであそこにいるかなー」
「俺は駅にも行っちゃいけねぇのか」
「そーじゃなくて」
 また機嫌の悪くなっていく青峰を笑おうとして、失敗した。青峰は面倒くさそうな顔になって叩いてくる。平手は額に当たってぺちんと軽い音をだした。
「何言われたんだよ」
「……青峰ー……」
「気色悪い声出すな」
「……」
「……」
 しばらく黙秘してみたけど駄目らしい。あーあとため息をつく。そう何度も思い出したくないのに、厄日なんだろうか。
 しかし、自分の問題を青峰に言っても仕方ないだろうと分かっているから、やはり言いたくない。無限ループってのに嵌っているだけだから、実は簡単なのだ。認めたくないが、自分がガキだというと子だし。
 冬の大会は、自分たちは出られない。先輩たちはもう一生出られない。昔からの決め事だから文句を言っても始まらないんだけど、とても理不尽に感じてしまう。それでも先輩たちが部活に参加しなくなって、仕方ないんだってやっと受け入れたのに火神にわざわざ説明しなくてはならなくて。しかもこれで最後って思った試合は火神の知り合いらしい奴にぼろ負けして。火神のレベルってキセキの世代と同じなのにそいつもキセキの世代が同じ高校にいるらしくて。リベンジしたいのに先輩たちはもう引退だからもう機会がない。最悪だって思いながら帰ってみれば青峰がいて。コイビトだけど青峰もキセキの世代で。俺はやっぱり勝てなくて。ウィンターカップにキセキの世代はみんな出るのに、それなのに、俺は出れない。
 ほら、振り出しに戻った。
「キセキの世代ってさー……」
「……」
 黙り込む。言いたいことは多く、言葉にできないことはもっと多く、それでも言ってはいけないと理性が警告する。その警告が正しいと分かっているから、半開きのまま震えていた口を無理矢理閉じる。
 ちゃんと言葉は飲み込んだ。二度と出てこない。
 一度目を閉じて深呼吸した。戻ってきた視界の端でカーテンが揺れた。昼間がからっとした晴天だったから夜はちょっと冷え込んでいる。それでも夏の暑さは残っているようで、窓を開けているくらいでは涼しくない。部屋のフローリングも生温くなっている。雨でも降ればまだ涼しくなるかもしれない。青峰が嫌っているのは知ってるけど、クーラーをつければさらにいいのにと思う。
(悔しいとか、次は負けないとか、思ってるけど……思ってるけど、さ)
 思うことに意味がない気がしてくる。もう、勝てない気がしてならない。それを、情けないって言える奴が何人いるんだろうか。
「……んだよ」
 青峰が呟いた。自分に向かって発せられたものじゃないから、ほっとした。
 青峰は視界にいない。真後ろの体温をぎゅうっと抱きしめたかった。





キセキのチートが許せないけど、青峰はそのチートさで苦しんでいるから言えなくて、でもそれって贅沢な苦しみだと思って悔しい
凡人とか天才とか考えたくないのに思い知らされて、でも青峰は好きなんだよ、という津川
津川は青峰が大好きなんです

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