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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 扉を開くと、見慣れた室内が広がった。昨日出てからまだ一日も経っていないのだから当たり前なのだが、その代わり映えのなさに何故か心がささくれだつような気がして、入口で動けなくなってしまう。
 負けた後に意味もなく部室に来てしまうのは、きっと部活をやる人間の性なんだろう。なんとなくそう思う。俺自身どうして来たのか、よくわからない。本心は、いろいろ参っているし体も疲れきっているから早く帰りたい。居続ける必要はもとよりない。入る理由もない。
 なのに同時に、ここから動きたくないと強く思う。このまま時間が止まってくれないかと思う。
「世界の終わりみてぇな顔すんなよ」
 後ろから声が掛かる。いつの間にか笠松が立っていた。
「あ……」
「んだよ、さっさと入れ」
「……ああ」
 言われて、蹴られる前に中に入った。何の問題もなく簡単に入れたことに何故かびっくりした。笠松はさっさと入ってロッカーの中から何かを出して鞄にしまっていた。
「小掘は?」
「帰ったよ」
「そうか」
「閉める?」
「いや……まだいい」
 笠松がすとんとベンチに座った。それから天井を見上げる。
「世界の終わりみてぇな顔、すんなよ」
 こちらを見ないでまた笠松が言う。そこまで酷くなっていないと背中に反論すれば、嫌みったらしく鼻で笑って、どうだか、なんて言われた。こういうときの笠松は嫌いだ。むかつくとかじゃなく、何か嫌い。
 たまに笠松はこうして嫌みになる。それは機嫌が悪いからではなく、何かを言い澱んで迷っている時だ。笠松は物事の割り切りがよさそうに見えて意外としつこく執着する。言うべきか黙るべきかで悩み、煩悶している場繋ぎのように嫌みを言ってしまうのだ。同学年の奴以外に言っているところは見たことがないが、面倒なものだ。
 いや、心地いいときもあるんだ。その不器用さが愛しくって、支えになっていることに苦笑して、言葉を待ってやれるときだってある。ただ、今日は、無理そうだ。何がということなく怒鳴りそうになる。
「森山」
「何」
 心を読んだかのように名前を呼ばれて振り返った。笠松はまだロッカーの方を向いていた。呼んでおきながらこっちを見ていないことに少々むかつく。
「泣いていいぞ」
「――」
 どくんと、心臓が鳴って鳥肌が立つ。
 何だ、それは。だから嫌いなんだ。
「……そうか、じゃあ、遠慮なく」
 言った瞬間、本当に遠慮出来なくて俺は泣き出した。その状況には俺自身びっくりしていたけど、やっぱり何か無理をしていたらしく、止まりそうになかった。笠松は振り返らないままで、怒鳴ってやりたくなった。
 笠松は嫌いだ。俺かわいい子が好きだから、嫌いなんだ。
 笠松は、いつもこんなんだから好みじゃないんだ。厳しいくせに、ときどき我儘で、仲間思いで、そんな気遣い必要ない俺まで甘えさそうとするから嫌いなんだ。
「……かさま、つ」
 無理に声を絞り出すと、喉が引き攣った音を出す。笠松は振り返らない。きっと笠松も、世界の終わりみたいな顔をしているんだろう。
 しかし、それなら。世界が終わってしまうというんなら。
「お前も泣くべきだよ、笠松」
 笠松は、一瞬だけ肩を揺らした。それだけで俺はもう無理で、押し留めていた嗚咽はまた言葉を嗄らした。笠松は振り返って、驚いた顔で俺を見た。なんて我儘な奴だ。
 ちくしょうと思う。叫んだかもしれない。
 世界が終わってしまうような顔にだってなるだろうさ、終わってしまったんだから。それを惜しむなら、泣かなくてはいけないだろう。何度も、泣いて、叫んで、悔しがって、何度でも、泣いていいんだろう。受け入れるなんて当分出来ない。
 だけど、俺を甘やかさないでほしい。俺だって覚悟してきたのだから、甘やかすな。俺の悔しさまで一人で背負子むのは我儘だ。
「俺は、さっき……」
「泣けよ!」
 目を腕で覆ったまま怒鳴った。
 俺が一番笠松と笠松は対等だ。これは時間に裏付けされた自信だ。俺が甘えていいなら、笠松だって泣くべきなんだ。俺は笠松に甘えていいと言われると、嬉しくって、甘えたくなるんだから、笠松だけ泣かないなんて、そんなのは悔しいだろうが。だから、笠松は泣くべきなんだ。何度も泣いて、悔しいなら叫ぶべきなんだ。
「もりやま……」
「これ以上、怒鳴らせるなよ……」
 笠松がまた黙る。俺の嗚咽は、しばらく止まらなかった。
 それからずっと経ってから、頷いたのか首を振ったのかも分からないくらい小さく、笠松の頭が揺れた。



世界が終わってしまうと言うのなら、どうか大声で泣いてください









紫に全部持っていかれたのは地味に悔しいです……
森山先輩けっこう好き^^

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