ぽたぽた。
WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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幼馴染というのは存外面倒くさいところがある。例えば苦手な食べ物とか動物を知られていること。初恋が誰だったとか家出の大失敗だとか、知らなくていいことも知っている場合が多い。
明け方、さつきの家に行く。 今日みたいにイベントのある日は決まってこいと言われるのだ。さすがにもう夜から泊まりに行くようなことはないが、小さいときは普通に泊まりに行っていた。幼馴染の特権だとさつきは無意味にうれしがっていたのを思い出す。 もっとも、漫画のようにベランダを行き来するようなことは出来ないから普通に玄関から入るのだけど。 「さつきー」 靴を脱ぎながら呼ばわる。さつきの家はおばさんもおじさんも早いから向かいの家にだけ注意していればいい。隣はどうせ俺の家だ。 リビングに行って、起きてこないなと不思議におもいながら立ち上がる。勝手知ったる他人の家をまっすぐにさつきの部屋まで行き、一応入るぞと断って扉を開けた。 意外というかいつもどおりというか、さつきは起きてベッドの上に座っていた。なんだと思ってため息をついたが、その横顔に固まった。ぎょっとしたに近い。 「お、おいっ、さつき!」 「え?」 思わず声が上擦ってしまった。だが呼ばれて振り返ったさつきは何事もなかったようにきょとんとしている。 「あーっ、もう、勝手に入らないでってば~」 「いや、お前……、何泣いてんだよ……」 「……えぇ?」 さつきは不思議そうに首を傾げたが、その拍子に目尻にたまっていたものが零れる。そこでようやく頬が濡れていることに気づいたようだ。そうして、ああ――とまた泣き出す。 具合でも悪いのかと思いながら近づくとさつきは体を預けてきた。肩口に頭をおいて、ほろほろと涙をこぼす。仕方なく頭を抱いてやると胸に収まったから、何もわからないが抱きしめた。 ときおり背中を撫でながら待っていると、さつきも落ち着いたのかゆっくり体の向きを変えた。腕からは開放したが、まだ身を預けられたままなので動けなかった。顔が見えないから電気を点けたかったのだが無理そうだ。 「いま、夢を見てたの」 さつきがどこかまだ寝惚けた様子で話しだした。 しかし夢を見たというさつきに、本当にどうしたのかと心配になる。幼少の頃からの付き合いだが、さつきは怖い夢を見て泣き出すなんてことは一度もなかった。 「青峰君、いた」 「えっ?」 その一言に焦る。それはつまり俺がさつきを泣かせたということだろうか。喧嘩? 夢の中で、何を言ったのだろうか。 さつきは俺の顔は見ずに、俺だけじゃないと続ける。すこしだけほっとした。 「テツ君も、ミドリンも、きーちゃんも、ムッくんもいたの」 「赤司は?」 「いた」 今吉サンも若松サンも佳典サンも良もいて、火神やら何やら他校のやつらまで大勢いたらしい。みな笑って、何かを口々に祝ってくれていたそうだ。 「幸せな夢だったの」 覚えていないけれどとても、たしかに幸せな夢だったのだと言う。 それでもと、さつきは瞼を閉じる。思い出そうとしているのか、長いまつげが揺れて、淵にたまっていた涙も揺れる。 「でも、すごく、悲しい夢だったのよ」 「……ふーん」 幸せだけど悲しかったと、また目を開けたさつきの髪を梳いてやる。さつきはくすっと笑って、思い出せないけどと、切ないような嬉しいような声でくり返していた。泣くくらいなら思い出さなくてもいいと思ったから、それ以上夢のことを聞かなかった。 それから随分経ってから(といっても十分学校に間に合う時間だったけど)ようやく体を起こす。少し照れてありがとうと言ったさつきの具合は大丈夫そうで、目許も腫れていないようだったから、まあいいかと思う。 「ったく、俺向こういるぞ」 「うん、あ、待って青峰君」 「あ?」 振り返る。さつきは変わらない体勢でベッドにいた。朝日と呼ぶにはいささか遅い太陽がその背中を照らしていて、髪は淡く輝いていたが顔は逆光になっていた。 「誕生日、おめでと」 にっこりと笑う。見えなくても、それはわかる。 「……おう」 言って扉を閉めた。リビングに向かいながら、なんとなく、さつきは今日も部活に行くんだろうと思ったら部活に行こうかという気持ちになったから、今日は練習に参加してやろう。 それで、最後までやる気が続いたら何か奢らせよう。でなければ夕食でも食わせてもらおうと思う。こういうのも、さつき曰く幼馴染の特権らしいのだ。 と か ね ! 青峰誕生日いつだよ!桃井より後だとうれしい! PR |
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