ぽたぽた。
WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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音楽を聴いていると肩を蹴られた。頭じゃなかったのは青峰のかけなしの良心だったとして、文句は言いたい。
「何だよ」 「お前、アメリカいたんだろ?」 俺のベッドに勝手に横たわった青峰がつまらなそうに訊く。視線は手に持っている月バスに注がれていたが、それは昨日も読んでいたやつだ。指摘すると首だけ俺に向けて、この部屋には目新しいものが何もないと馬鹿にしたように笑われた。 「で? 銃とか持ってたわけ?」 「No.」 「んでだよ、日本人だからとかじゃねーよな」 「十四歳じゃ無理なんだよ」 「はっ、つまんねーの」 言って、視線は雑誌に戻る。またすぐつまらなそうな顔になっていて俺もいらっとした。二種類だけの百面相を見ていても別に面白くないし、意図が掴めないまま納得されるのも嫌だ。 「どういうことだよ」 「別に。つまんねーからつまんねーっつっただけだろ?」 「だから、それはどういう意味だって訊いてんだよ!」 「せっかく銃撃てるとこいたのにもったいねーって思ったんだよ!」 軽く怒鳴る。それが気に入らなかったのか、青峰もむかついた顔のままで青筋を浮かべてにぃっと笑い、俺に銃を突きつける。 「……んだよ、そんなことか」 銃にはびびったが、やっと意味を理解して、気が抜ける。俺が返さなかったことに肩透かしを食らったのか、青峰も不服そうに顔を背けた。それを追ってぐるっと首を回す。握られているのは黒くて少々大きめのオートマチックタイプの銃だった。 ぐるっと、今度は反対側に回す。隅に積み置きしていたモデルガンの箱が崩れていた。開封されているものを引っ張り出したんだろうが、注意する気にもならなくて嘆息する。 「あー、つまんねえの」 「撃ったことはあるぜ」 「へえ、人?」 「馬鹿か」 俺の反応ゆ鼻で笑う青峰に、銃なんてものが欲しいのかと訊くと撃ってみたいのだとまた馬鹿にされる。こうなると今度は俺が面白くねぇから、寝転ぶ青峰を見ながら立ち上がった。十歩で届くモデルガンの箱の一番下から黒い銃を取り出して投げれば、起き上がった青峰が安っぽい玩具につまらなそうな顔をした。 「やる」 ほれと弾も渡す。受け取ったまま今度は怪訝そうな顔になった。 「いらねーよ、何だよこれ」 「本物と実弾。いらねぇなら置いとけ」 「はあ?」 俺の言っている意味が分からなかったのか青峰は眉を思い切り歪めた。その表情を横目で見ながら、知らないだろうから仕方なく俺が銃装に弾を入れてやる。 「おいこら本物ってなんだ。お前の親警官か?」 「向こうの知り合いがこの前遊びにきてよ、置いていきやがったんだよ」 「なんでそいつは銃持ったまま入国ゲートをくぐれてんだよ」 「ゲート通ってねぇんじゃねぇか?」 「……不法侵入であってるか? この場合……」 「そもそもアメリカ国籍持ってねぇからな、あいつ」 青峰が意味がわからないと怒鳴ったが無視した。準備のできた銃を渡すと青峰は少し考え込む顔になる。当たり前だが、半信半疑より少し疑いが多いようだ。 「……これ撃ったことあんの?」 「……片手では撃たねぇ方がいいな。いかれちまう」 「はっ、弱っちいの」 だがそれも一瞬で、すぐに青峰は獰猛ながら嬉しそうに目を輝かせる。さっきはどうでも良さそうに見ていた銃を握って、わかるはずない構造を調べるように弄りだす。こういう反応は同い年とは思えないほどガキっぽいと思う。 「サイレンサーとか付いてんのか?」 「そこまで貰えなかったからねぇな、あとサウンド・サプレッサーだ」 「はあ?」 「消音器じゃなくて減音器」 「どーでもいいんだよ、んなことは」 確かにどうでもいいことだと思う。だが減音器なしでは撃ったときの音がでかすぎて知られるどころの騒ぎじゃない。撃ったはいいが捕まりました、なんてのはかっこ悪ぃ。少年院行きも面倒だ。 「……かーがーみーぃ」 トッと、頭に銃口を突きつけられる。まだ安全装置を外していないから暴発させるようなヘマはしていないと思うが、ノリでゆっくりと手を上げる。 気付いたのだろう、案の定、青峰の額には青筋が浮いていた。自分もだが、それより短気な青峰の反応はますますガキっぽい。その子どもにしてみれば、宝箱を見つけてその中がすでに空だったようなものか。いや、取り上げられたのか。 「じゃあ、撃てねぇじゃねーか」 苛立ったように青峰が手に力を込める。こういうとき、銃は簡単に壊れないからいい。 「日本で撃てるかよ、馬ぁ鹿」 「てめぇ」 「来年アメリカ行こうぜ」 静かに青筋が増えた。俺は少し楽しくなってきている。 「なあ、行こうぜ。銃なんざごまんとある国だ、今更一つ増えたって気付きやしねぇよ。殺さなければいくら撃っても構わねぇ。練習だって向こうでバスケしてりゃあ先輩たちも文句ねぇだろ」 命乞いにもならない穴だらけの提案だが、青峰は少し銃をどかした。だが変化していく目の色になんとなく嫌な予感がした。可笑しなくらい高揚していた気分が冷めていく。 「おい、今すぐ行くぞ」 「……アホかもう夜だろうが!」 言うと思ったことを本気で言った青峰にベッドにあった枕を投げつける。青峰はその瞬間だけぶっと声を出したが、まったくダメージなく、それこそ子どものように早く行きたいと駄々を捏ねる。額の青筋は復活していた。 「ああ゛ッ? 連れてけよ、撃つぞ!」 「無茶苦茶言うなバカ! こっから何時間かかると思ってんだ!」 「俺が連れて行けって言ってんだよ!」 「知るかふざけんな!」 喚きながら取っ組み合う。撃てなくとも拳銃で殴られれば十分重傷を負うから無理に手を押さえつけた。青峰と俺の力は互角だが、体勢のおかげで押さえ込める。噛みつこうとした青峰を逆の手でさらに押さえつけると盛大な舌打ちをされた。 「てめぇ、まじで殺すぞ」 「ふざけてんじゃねぇよ、馬鹿が。つーかよ」 奪い取った黒い鉄の先を向ける。 「今撃てば俺はお前殺せるんだぜ?」 「……へぇぇぇえ?」 俺からは見えない黒い穴の後ろからどこか興奮した楽しそうな声がする。焦点をずらせば青筋の浮かぶ額が見えた。そしてやってみるかというように手が銃口を額に持って行ったとき、おそらく、俺は笑った。 「俺は、お前が好きだからやめてぇけどな」 銃口は額にキスしている。俺のぼやけた手に握られた黒の下で、青峰はそのまま唇をまたにぃっと歪ませ、抑えたようにくっくと笑う。引っ張られた拳銃はたいした抵抗もなく再び青峰の手に渡り、目の前でみしりと軋んで鳴いた。 「俺が殺してやるよ」 ぽいと放り捨てられた銃がベッドを叩いたと同時に青峰は俺にキスした。まるで似合わない触れるだけのもの。互いに舌を噛もうと口を開けたとき、控え目とは言いがたいノックの音がした。何だと言いながら俺が床に再び戻れば、アップルパイを持って母親が入ってきた。タイミングがいいのか悪いのかわからない。 母親は青峰に笑いかけたあと、ふと珍しいものを見る目になり、落ちていた銃を拾う。目がそれは何だと訊いてくる。受け取った青峰はおちゃらけたように笑って銃口を母親に向けてバーンと言う。俺はモデルガンだと言った。 0.008kg:ピストル弾の重さ。 別に殺人願望があるんじゃなく、武器に興味がある。そして相手に興味がある。 不法入国だよ、青峰 PR |
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