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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 黒子と喧嘩した。理由はよく覚えていなくて、つまり相当どうでもいいことだったんだと思う。それでも、手を出さなかっただけで丸一時間は口論していたわけだから、やっぱりそれなりの理由だったんだろう。
 ただ言えることは、猛烈に腹が立ったということだ。
「くそっ」
 悪態を付きながら部屋に入ると携帯が鳴っていた。時計はすでに零時を指していて、誰だと思って見れば、見知らぬ番号からだった。
 いらっとして、通話ボタンを押す。不審人物との接触は避けるべきらしいが、今はこの非常識な奴を怒鳴りつけてやりたかった。八つ当たりだが。
「おい、てめぇ誰」
『火神君』
 止まった。器械を隔てて聞こえてきたのは黒子の声だった。先程まで(四時間も前のことを先程と言えるのかはわからないが)あんなに盛大な口喧嘩をした相手から連絡があるとは思っていなかった。
『火神君、すみません、聞こえていますか?』
「……なんだよ」
 散々迷って出た言葉はそれだけだ。何せ真意が読めない。普段の表情でも何を考えているのかよくわからないのに、表情以前にどこにいるのかもわからない状態では尚更だ。それに、本当にさっきまで喧嘩していたのだ。文句をいえば良いのかもわからないし、やはり気まずい。こっちから前向きな世間話をしようという気分にもならなかった。ただの連絡ならさっさと終えたい。……本当に連絡事項だけだったら、それはそれで腹が立つのだが、それは我慢だ。
『助けてください』
「はあ?」
『今家の近くにいるんですが、どうしても足が動かないんです。よければ、迎えに来てもらえませんか?』
「はあ!?」
 なんだそれはと思わず怒鳴る。いったい自分がいない間に何があったんだろうか。動けない程の事態に血の気が引いていく。
『火神君……あの』
「どこにいる!」
『あの、勘違いしないでください。無事ですから』
「いいから答えろ、どこだ!」
『分かれ道です。火神君の家に行く道の』
 上着も取らずに走る。外は冷え込んでいて、明日は雪が降るんじゃないかと思う。この時間に黒子はどこをうろついているんだと思わずにいられない。黒子の家までの最短ルートを考えながら、自分のせいかと頭の片隅で苦々しく思っていた。事故でなければいい、事故でなくて、また昨日のようにバスケが出来るなら構わない。
 足に力を込める。どこまでも速く向かわなければと思いながら、ぎっと奥歯を噛んで悪態を付く。
「黒子のやつっ……あとで絞めるッ」
「それは嫌です」
 びくっとした。変な声が出ることはなかったが、つい思いっきり振り向いた首が痛い。軽い鞭打ちになっているんじゃないかと思う。
 声でまさかと思ったがやはり黒子がいた。いつも通りの表情で塀に凭れている。
「お前っ!」
「静かにして下さい。近所迷惑です」
 よっと立ち上がった黒子の顔の横に手を叩きつけた。必然、壁に押さえつける形になる。壁は冷たかったから俺の手はしもやけになるかもしれない。黒子は普段通り平然としている。
「動けねぇんじゃなかったのかよっ」
「動けませんよ。ここまで来たくせに、足が言うことを聞いてくれないんです」
 意味が分からないと小声で叫んだ。黒子は気にしていないのか、そのまま、呼び出したことを謝られた。また少しイラついた。
 どうやら簡単に話すつもりはないと分かったが出たばかりの家に引き返すのはなんだか格好悪く思える。何せここは家から5分と離れていないのだ。しかも大した分かれ道ではない。
 しかし寒い。自分は風呂上がりなのに防寒なしで飛び出したせいで寒くて仕方がない。黒子がコートを脱ごうとしたが、さすがに着れないから遠慮する。呼び出したくせに黒子はちゃんと歩けるようなので、付いてくるのをいいことに帰路につくことにした。
「何しにきたんだよ」
「……謝りに来ました」

「あんなところでかよ」
「……仕方ないじゃないですか」
 腕で肩を覆いながら睨む俺に黒子が少し目を伏せた。
「たぶん僕が悪いって思って謝ろうと来たくせに、いまさら謝って、これ以上君に嫌われたらどうしようって思ってしまって、動けなくなってしまったんです」
「……あん?」
 理解しきれず反駁して、理解してから固まった。立ち止まった俺を見上げてくる黒子の頬は、夜に冷やされてマフラーの下でさえ赤くなっている。それを見て、はあとため息が出た。
 黒子の頭をぐいっと掴む。そして、そのまま家に押し込んだ。小さく間抜けな「あ」が聞こえたが気にしないことにする。
 扉を閉めれば、外との温度差は一目瞭然だ。暖かくてやっと一息ついた。
 そのまま自室に追いやって黒子の頭を今度はぐしゃぐしゃに掻き回す。冷たいマフラーとコートを椅子に掛けさせれば、やっと抱き締められた。
「あの……」
「あー……、俺も悪かったわ」
 黒子の体も冷えきっている。電話してくるまでにどれだけ待っていたのか。なんだかんだとメンタルの弱いところがある黒子のことだから、もし動けないほどのことが起きているならそれはきっと自分のせいだろう。
 それを言い合う気はないが、伝わればいいと乱した髪を整える。黒子は、やっと力を抜いた。
「そういやお前、喧嘩の内容覚えてるか?」
「いえ、火神君もですか?」
「ああ、……じゃあお前、なんで謝りに来たんだよ」
「……笑いませんか?」
 何故か言いよどんで、黒子は上目遣いに見つめてくる。俺が頷くと、黒子は口元を腕に隠して話し出した。
「帰りに福田君たちに会いまして、また喧嘩したって言ったらもう別れたほうがいいんじゃないかって言われて、その、悔しくなったので……」
 赤面した黒子を見ながら、一瞬、本気でどういうことなのか分からなくなった。しばらくして漸く理解しきる頃には、黒子は呆れられたと思ったらしく、あさっての方向を向いたまま黙り込んでいた。
 福田たちはおそらく悪気なく、からかう感覚でいったんだと思う。俺たちを別れさせるメリットはないし、悪意を向けられるほど険悪な交友関係ではない。黒子もそれはわかっているようで、そのうえで悔しかったんだろう。
「まあ、なんだ……」
 何というか、改めて思う。黒子は実はめちゃくちゃ可愛いんじゃないだろうか。こういう可愛いところを知っているから、たぶん自分は助けを乞われれば飛んで助けに行くんだろう。それが恨めしいとは思わなかった。
「泊まっていくか?」
「……はい」
 ぎゅうっと抱き締める。黒子の体温は低いほうだが、冷えきっている自分には充分暖かい。覚えてもいない喧嘩の理由に感謝した。






仲直りする火黒が書きたかったのです

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