ぽたぽた。
WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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じとじととした梅雨の時季、たまに晴れれば動きたくなるのは当たり前だ。特に黒子や火神のように若いスポーツマンにとって体を動かせないことほど苦痛となるものはない。
実際にはつい先日も試合だ練習だと明け暮れており体を動かしていなかったわけではないが、やはり太陽の下でおもいきり動かせるのは気分が違う。雨に洗われた草木の色も気分を高揚させた。 「んで、てめぇがいるんだよ」 「ああ? 文句あんのか?」 「あるに決まってんだろが、ウゼェな」 そして好きなことで貯まったストレスを発散しようとストリートバスケに及ぼうとしていた。だが、同じように鬱屈とした毎日を過ごしていただろう彼らもこの日を見逃すはずがなかった。運悪く青峰と津川の二人組みと出会ってしまい、黒子が挨拶をしてすぐ火神は青峰とにらみ合いである。 「どけよ、お前なんかがやってたら怪我するんじゃねえ?」 「あ? 寝ぼけてんじゃねぇぞ」 「こっちの台詞だ」 なんという喧嘩腰だろうか、しかも二人ともうれしそうにしているのだ。 「やるか」 「上等だ、負かしてやらぁ」 羽織っていた上着をお互いぱっと投げて二人はコートに向かう。格好付けめ。かろうじて受け取った上着を適当に畳みながら、まったくどうしようもないと黒子は嘆息する。口では仲良くする気などないと言っているのに、実際は同等に戦える相手だと知っているためにうれしくて仕方がないのだ、この二人は。 邪魔する気はないと日陰に足を向けたら、青峰の向こうで口を尖らせて仏頂面している津川に気付く。自分たちのデートが邪魔されたからか、それとも青峰の反応が案に違う方向へ進んでいるのか、なんにしろ不満らしい。当たり前だ。恋人が自分から意識をはずしてばかりいて面白いものがいようか、いやいまい。本当ならば抱きついてでも引き離したいのだろう。黒子自身そうなのだから、きっと。 しかし津川でさえ自重しているのに、いわんや黒子においてをやだ。臨戦態勢の二人を相手にするなんてしたくない。そもそも殴るならまだしも抱きつくなんて柄にもない。 木陰に座ってコートを見遣ればバスケットボールを追って火神と青峰はいまだにらみ合っている。そのくせ動きは滑らかで流れるようで、まったくもってつまらない。そもそも楽しんでいる二人は二対二でやろうかとは思ってくれないのだから待っている黒子は暇で仕方ないものだ。 「なんで俺ら、あんなのが好きなんだろーね」 再び嘆息しようとしていた黒子に津川が近づいてきた。手に持っている青峰の上着は袖が地面すれすれにある。指摘しようかと思ったが、その前に津川は黒子の隣に腰を降ろしたのでやめた。 「青峰君が好きなんですか?」 「だったら何だよ」 「……いえ」 「あーあ!」 座ったまままるで背筋するように津川は後ろに伸びる。反対に地面に押し付けられている上着に少し同情めいたものが湧いた。雨上がりの青草は落ちにくいのだ。 津川はしばらくんーっと筋肉を伸ばしていたが、はあと脱力して前屈みになる。ちょうど青峰がダンクシュートを決めたところだった。笑い声と悪態が遠く聞こえる。 「……バスケしたいなー」 「混ざりますか?」 「ええー、やだよ」 即答され、わかるだろうと忌々しげに一瞥される。まあ、わからなくない。 二人とも黙ってしまうと、なにやらしんとしてしまって恋人の騒ぎ声すら遠くなったように感じる。季節はまだ梅雨が明けておらず、久しぶりに見た太陽の日差しと若い草木は夏になっているがいまだに夏のにおいはしない。しかも薄暑の今日はじっとりと蒸し暑く、木陰にいてもすこし汗をかきそうだ。もっとも、風のつよい日なので幾分涼やかなほうだ。 ふわっと黒子を通り過ぎていった風に目を細める。湿気を含んだ風はぬるいが、空気がすこし冷える。やはり夏のにおいというのは感じられず、その代わりに言葉としては聞き取れない声が混じっていた。目を開ければ今度は火神がリングにぶら下がっていた。近いうちにあのリングは壊れてしまうに違いない。 「なあ、なんでたいく座りしてんの?」 「はい?」 不思議そうに言う津川を向けば、津川の顔は黒子よりすこしだけ後ろにある。日向のほうばかり見ていたからか、一瞬目の前が緑に点滅してくらりとした。 「いや、たいく座りしてんじゃん、暑くなんない?」 「はあ」 目を強くつむって視界を慣らす。まだかすかに緑や黒がちらつくものの、先程よりは回復してくれたようだ。 彼の言っているのは体育座りのことだろうかと黒子は自分を見る。まあ、そのような形であるが別に意味はないのだと答えて、津川を真似て足を伸ばす。手を後ろにつくと火神の上着が落ちてしまいそうになったので腹に抱えなおした。 「あーあ、暇!」 「そうですね」 「絶対俺たちのこと忘れてるよ、あれ」 「はい」 青峰から誘ってきたのにとぶーぶー文句たれる津川に、やはり青峰と火神は似ているのだなと呆れた心持になった。黒子は火神に誘われてここにいるのである。つまり二人とも同じ行動をするくせにお互いは気が合わないのだ、犬猿の仲というものだろうか。 湿ったぬるい風を再び受けながら、体勢を戻す。後ろ手をつくあの姿勢は存外疲れるのだ。 なぜ自分が二人のことをつらつら考えねばならぬのかと眉間に皺を寄せたとき、ふと先程の質問を思い出す。津川はなぜ青峰が好きなのだろうか。 こう言ってはなんだが、青峰は傍若無人で我侭だと黒子は思っている。もちろん素直で実は優しいことも知っているが、基本的に自分を中心に置いた考え方なのだ。津川も我が強いので二人が恋人として付き合えているが不思議だった。 「あの、好きなんですか、青峰君のこと」 「え? うん」 「どういったところが?」 津川がぽかんとする。分かりにくいかと理由を加えると、ようやくああと考えはじめた。しかし、しばらくもせずに不機嫌な顔をする。 「あんまないかも」 「そうですか」 「うん」 ぐっと津川も体を起こす。彼の手に握られたままの青峰の上着はようやく地面から浮き上がった。津川はそれこそ体育座りのように膝を抱え、我侭だし、俺様だし、殴るし、暴力的だしと青峰への不満をいう。ボキャブラリーが少ないのか意味は重複するが、よくもまあ出るものだ。 それでも口を尖らせて言うその表情は拗ねているらしいもので、黙って聞いていればしばしの沈黙を挟んで、でも格好いいのだと続く。自分から振ったのだが惚気られてしまった。 「そっちこそなんで好きなんだ、火神」 「なんでと言われても」 「絶対バカじゃん。バスケバカ。バ火神」 「はい」 黒子が火神を好いていること前提で話を進めているが、そこは事実なので構わない。そして散々な言われ様だが黒子に否定のしようがない。火神の猪突猛進や日本人離れした行動にため息が出ることはあるし、何より好きなことに熱中して蔑ろにされるのはよくあることだ。構ってもらえないし、恋人としては不平不満もある。 それでも、好きになった理由など言わずもがなだ。 「かっこいいところ、でしょうね」 「あっそ」 津川は呆れたように応じ、二人して一緒に吹きだした。お互いに趣味が悪いそっちの方が悪いと笑い合う。 しばらく笑ってはあと息をつくと、また二人の間には沈黙がおりる。それは別に居心地悪いわけではなく、むしろ何だか気楽だ。思えば最初からそうであった。 「ね、二人にアイス奢らせようよ」 「どうせなら昼飯から全部です」 「あはは、いいね!」 熱い光の中から怒鳴りあっているような声が聞こえ、構われない腹癒せに木漏れ日でイタズラめいたことを考える。バスケットをしている姿は格好よくて好きだが、構ってほしいのも本当なのだ。火神はすこし黒子を気にしつつ、青峰は盛大に文句を言いつつ、きっと言うことをきいてくれるのだ。 「何食べよっかなー」 「冷房のあるところがいいです」 目も合わせないでくっくと笑う。滲む汗を拭いながら、たまにはいいかなと思う。蝉はまだ鳴かない、梅雨晴れの午前中。 黒子ってきっと体育座りする PR |
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