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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 今日の火神君は、いつもと少し違っていた。口数が少なく、だからといって不機嫌なわけじゃない。なんとなく静かだった。
 珍しい喋らない火神君は、部活が終わって、みんなとも別れて、それではさようならと言ったらいきなり口をきいた。ただ一言、自分の家に泊まっていけと言う。びっくりしたけど、ただそれは、予想もしていない言葉、じゃなかった。明日がどういう日か僕は覚えていたし、もしかしたらそう言ってくれるのかもしれないと期待していた僕はあらかじめ親に外泊の許可を貰っていた。だから簡単に、そうですね、そうしましょうと言って火神君の家にお邪魔する。火神君は短くオウと言っただけだった。
 食事と風呂を借りて、僕らはあとは寝るばかりとなる。火神君のベッドは大きくて二人で寝ても問題ないんだけど、火神君のお母さんが気を利かせてくれて布団を持ち込んでくれたので、僕らは敷いたばかりの布団に座っていた。火神君は持ってきた水をときおり飲む以外話すことをしなかった。それはどうにも寂しく、僕は零時に送られてくるだろうメールを処理したらさっさと寝てしまおうと小さく決心した。

 ようやく時計が日付の変わる一分前を指したとき、火神君は突然テレビを消してしまった。特に観ていたわけでもないけど、BGMになっていた音が消えてしまうと、部屋の中が一気にしんとなる。こんな静寂の中で火神君までまだ喋らない。何なんだろうかとつい勘繰った。
 取り敢えずもうあと三十秒もないと思って携帯を開こうとしたら、火神君は携帯を僕の手から奪い取って部屋の端に投げてしまった。平積みされている本に当たって大きな音は鳴らなかったけど、がしゃんと鳴いてぱかっと開いて液晶が光った。
 何をするんですか、なんて文句をいう暇はなかった。火神君は僕をベッドに押し倒すとキスをして、同時に耳を塞いできた。いつもなら口内を犯す卑猥な音が聞こえるのに、塞がれた耳にはぼうっとした音と伝わってくる鼓動が、なんとなく分かるだけだった。
 口が離れて乱された呼吸をなおす間も、火神君は僕の耳を塞いだままだ。目の端でメールを受信した携帯が光っていたが、それも見えるだけで音が聞こえない。離してと言おうとしたら、また口を塞がれる。間近にある目が黙れと威嚇するのでしかたなく黙ると、火神君は僕の耳を塞いだまましばらく耳を済ませている。目の端で液晶がまた光った。その光が完全に沈黙したのを確認すると、火神君はやっと手をどかしてくれた。そのまま嬉しそうにゆっくり笑って、さっき携帯に送られてきたメールにも書かれていて、今日何度も言われるだろう言葉を言ったんだ。

 満足そうな火神君に、僕はただありがとうございますと返した。内心は強い興奮状態で、そうなればそうなるほど、僕は恥ずかしくって表情がなくなってしまう。押さえつけられた耳は赤くなっているだろうから、たぶんもっとわからない。
 僕はこんなに強い独占を受けるなんて思っていなかった。火神君は、その見た目通りそれなりの独占欲があるけど、いままでのそれは僕が黄瀬君や緑間君と昔話をしていてたら拗ねるくらいの、わかりやすい小さな独占だった。それなのに、今日はどうしたことだ。
 火神君はあの瞬間、僕が十六年目の人生を受け取ったその瞬間に、それを祝うのが自分でなくては嫌だったんだ。それどころか自分の声以外の音が僕の耳に入ることさえ嫌だったんだ。一切の音を消してしまって、僕が火神君だけを見るようにしたかったんだ。
 ぞくぞくしてしまう。火神君の内面を覗いたためか、また興奮していた。
 改めて嬉しくなって火神君にもう一度礼を言う。今度は笑えた。僕の上で眉を歪めていた火神君も微笑んでくれて、またキスをしてきた。

 僕が届いているはずのメールの返信を許されたのは朝になってからだった。
 先にシャワーを浴びなくてはとベッドから降りるとき、せっかく敷いてもらった布団を使わなかったと思って罪悪感を感じた。
 交代に風呂を明け渡して、三通ばかり届いているだろうと携帯を拾った。受信箱には二十通近いメールが送られていて面食らう。いくつかは朝からのものだが大半が零時周辺に送られていた。中身は祝いの言葉で、たまに再戦の申し込みがあった。後に火神君に問い詰めて、監督の思いつきにより部員全員で零時メールを送ったのだと発覚したが、その時の僕はとても愛されているらしいと実感して嬉しくなっていた。
「誕生日、おめでとう」
 風呂から上がった火神君が、すべての代表のようにまた祝いの言葉をくれる。僕は全員に直接会ってお礼を言おうと決心して、火神君に微笑み返した。





黒子ハピバ!
火神のご両親は一階に寝てるよ、熟睡するからバレてないよ

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