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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 帝光バスケ部は部員が多かった。その中でレギュラーになれるのは本当に数人で、皆三年間、そこを目指して励んだ。指導監督は部長だろうと新入生だろうと構わずに使ったし、入れて勝てるなら何度も出した。青峰はすぐに見出され、その才能が開花していくにつれて、俺たちをレギュラーにするのが当たり前になっていた。
 しかし、上級生には面白くない。不真面目な気持ちで部活に参加しているものは一人もいなかったから学年が上がれば同級生も同じ気持ちになる。だから、後にキセキの世代として他から一線引かれてしまうまで、嫌がらせの対象には、よく俺がなった。


 バシャッと、水浸しになった制服を絞りながら昔のことを思い出す。自主練を終えてみれば制服がなくなって、せこい手口だと思うが、これでもう三度目だ。見つかったのだから、今回はまだ良い方か。ユニフォームを狙わないあたり、相手もバスケは好きらしい。入学したての一年生にはまだ恨まれていないと思いたいから、三年生か、二年生か。誰にせよ、俺なんかにに奪われたら、悔しいんだろう。
「うぇえ、気持ち悪いっスね、もう……」
 夏だからといって、夜中である以上、放っておいても乾くはずはない。仕方なしにシャツに腕を通すと、背中からぞっとする冷たさが伝わってきた。運動した後の身体にこれはきつい。
 ため息が出る。たぶん海常でも起こると覚悟していたが、いざ起こるとやはりショックだった。心の何処かで、ここは帝光ではないから、違うからと思っていたらしい。
 しかし、変わらないのだ。何処だろうと、特異な能力を持つ者は炙り出され、弾かれる。例えそれが、キセキの世代で一番弱いだろう俺でもだ。周りからすれば恐ろしく、嫌味な存在なんだろう。
「……寒」
「そりゃそうだろ」
 誰もいない更衣室から返事が返ってきて、思わず体が硬直する。振り返れば笠松先輩がいて、悲鳴を上げたら蹴られた。
「お前、それどうした」
「そ、それがっスね……、水飲もうとしたらすっ転んで、手洗い場に突っ込んじゃったんスよ。着替えはないし、けど冷たいなぁ、て」
「……そりゃそうだな」
 笠松先輩があきれて項垂れる。そうですよねと答えながら、嘘をついたことに胸が痛んだ。何かと俺を気に掛けてくれる笠松先輩に嘘をつくのは、嘘をついているのは俺なのに、手酷く裏切られた気分だ。
 だが、話すつもりはない。かっこ悪いとかじゃなく、単純に嫌だ。話せばこの人が何らかの手を打つんだろうから、部内の空気が最悪になるし、機嫌も悪くなる。告げ口の代償は大きく、巡って俺に返ってくる。それは嫌だ。
「それ着て帰んのか?」
「そうっスね。あ、先輩の服貸してくれるとか?」
「んなもん無ぇよ」
「そうっスよね……」
「なあ、それマジに転んだのか?」
「ちょっ、笑わないで下さいよ~」
 はははと笠松先輩が笑う。俺も笑うけど、気持ちとしては一刻も早く帰りたかった。背中は気持ち悪いし、居心地悪い。なのに笠松先輩が出入口で立ち止まっているから出られない。
「……あの~」
「んなわけあるかあっ!」
「あいてッ!」
 いきなり怒鳴られて足蹴にされた。ごめんなさい、笠松先輩本気で痛いです。
「黄瀬、正直に答えろ。誰がやったか目星はついてんのか?」
「せ、せんぱい? えーと、何か勘違いしてないっスか……?」
「黄ぃ瀬ぇ?」
「すいません知りません分からないっス!」
「庇うなよ?」
「いやいや本当に知らないっスよ!」
 胸ぐら掴まれてば身長の差は関係なくなる。変な感じに腰が曲がって痛い。間近で睨まれるとつり上がった眼光の鋭さに泣きたくなる。
 笠松先輩はしばらくして、掴んでいた手を離してくれた。座りこんで、それからは黙ってしまう。ああもう、こうなるから嫌だったんだ。
「あの~、気にしないでいいっスよ? 覚悟してきましたし」
 必然性というものはある。青峰にケンカ売るようなバカはいなかったし、黒子は存在を忘れられることが多かった。キャプテンは対象外だっただろうし、緑間は占いによって色々と護られている。それに比べて俺は、ケンカは弱いのにやたら目立ってて、そのくせ意地を張る。モデルと並行させていて、責め立てる理由もある。一番狙いやすいタイプだ。もちろん俺も、やる方だったら確実に俺を狙う。
「我慢できなくなったら俺だって言うし、やり返すっスよ。何よりこんなことで俺からバスケを取り上げるのは無理っスからね」
 それでも辞めない。モデルとバスケを天秤に掛ければ迷わずバスケを選ぶ。バスケしか能がないと言われればそうで、それを分かっているから、俺が本気で挑むことは諦めない。屈することはない。
「大丈夫っス! 俺も暴力振るわれたことはないし、そんなことになったら叫ぶし」
「……」
 ゆらりと笠松先輩が立ち上がる。また怒鳴られると思って目をつぶる。
 いやに冷静な俺の一部は、怒鳴られれば笠松先輩に感じていた安心や信頼が揺らぐだろうと笑っていた。否定する俺はいない。何を言われても、俺には偽善に聞こえるだろう。
 笠松先輩が動く気配がした。そのまま肩を殴られた。
「あいッ!?」
「よし、ならやれ」
「うえっ何が!?」
「どうせ俺が騒いだって何か変わるわけじゃねぇし。こんなセコい嫌がらせは三年だろうから、もうすぐ引退だしな。面倒だからもう気にしねぇわ」
 ぽかんとした。あっさりと肯定をされると思っていなかったし、こんな爽やかな黙認が行われるとも思っていなかった。
「じゃあ帰るか」
「せ、先輩!」
「あん?」
「あ、えー、と」
 何か言いたいが、何も言えなかった。笠松先輩は自分のロッカーから自転車の鍵を拾って、帰るぞとまた言う。
「黄瀬、さっさと出ろ」
「あ、はいっス!」
 荷物を掴んで、出入口をくぐる。扉が閉まったとき、気づいた。シャツは乾いていた。









お年玉として捧げたもの
海常を書きたくて仕方なかった

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