ぽたぽた。
WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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拳を握ると、普段そう言う意味で鍛えていなくても、力の入った手は硬くなる。だがそんなのは当たり前で、しつけのために父親は拳を振り落とすし、恋人は甘えるために拳を振るう。歓声と共に振り上げた拳は清々しく、悔しさに固めた拳は神聖だとすら思えた。
一方で、殴るという行為は、ひどくひどく暴力的なイメージしか与えなかった。 ごっと、肩に鉄拳が叩き込まれる。痛いと思う前にむかついて、逆から飛んできた手を避けて近づいていた若松の顔に頭突きをかます。若松はくぐもった呻き声をあげた。 「いってぇ……」 「だぁっ……くそっ」 別に俺たちは格闘技ができるわけではないから、ケンカの様子は無様でかっこ悪い。終わり方も陳腐で滑稽。頭突きした後、お互いに倒れて動けなくなった。 どのくらい殴り合っていたのか。小一時間はやっていた気がするし、体力には自身があるのにここまで動けなくなっているのだから、もっと経っているかもしれない。確認したくとも倒れた体勢からは時計は見えない。若松しか見えない。 思い切り舌打ちを鳴らす。いつもの如く遅れて、それでも今日は部活をやろうと来てみれば、若松が不機嫌だった。原因は知らないし、たぶん俺のことじゃなかった。それでも不機嫌な奴がいると空気が悪い。一気にやる気がなくなって帰ろうとすれば、そういうとこを目ざとく見つけるのだ、この男は。 文句。次いで罵り合い。終いは殴り合いだ。他の部員は全員逃げてしまって、体育館は俺たちだけになる。だからって殴りすぎだ。顔も身体もじんじんと痛く、下手したら裂けている。 「ふざけんなよ、アンタ。ボーリョク反対~」 「ンだと……」 「んだよ、ふざけんな、マジにダリィんだよ」 鬱憤がたまってんのがお前だけだと思うなよ、くそったれ。教師に見つかればインハイ出場停止、停学に退学だ。ただでさえ態度が悪いと目を付けられているのに、文句しか湧いてこない。 「言うじゃねーかい、アホ峰。元はといえばお前のせいだろ」 ぎりぎり届くのか、若松は倒れたまま蹴りつけてくる。その無駄な体力はどこから生まれてくるんだろうか。口の中も切れてあるらしく、こっちは話すのは億劫だった。 「アンタのせいだろ……」 「ざっけんな! 殴ったのはお前が先だろ!」 違うと言い返す。少なくとも、殴る目的で拳を握ったのは若松の方だった。 人は、殴るためにも拳を握る。虐げたいから、従えたいから、壊したいから、無くしたいから。どんな理由があれ、それはただただ暴力的なものだ。しつけでも悔恨でもない、暴力のために作られる拳は痛く凶暴で周りを蹂躙する。受けた相手は、壊され、へし折られ、砕かれ、崩され、絶望する。 それはまるで、俺のようだ。それが嫌だった。 「おいコラ、何沈んでんだよ。俺のせいか?」 起き上がった若松が訊ねてくる。俺はもう答える気力もなくって、ただ黙って寝転んでいた。若松はしばらく文句を垂れたが、俺が反応しないと不意に頭を撫でてきた。 びくりとした。傷に障ったのもあるが、それ以上に意図がわからなかった。何事かと固まったまま見上げれば、若松は苦笑した。 「……面倒なやつ」 若松が呆れた声を出す。だから、どうしてまだこの男には動くだけの体力があるんだ。ふざけるな。面倒なのは若松の方だ。 頑固者で見た目どおり乱暴者。哀れみだか正義感だかなんだか分からないものを持ってて、ガキのようにそれを大声で喚いて押し付けてくる。なのに、こうして歳上風を吹かしてくる。 「……ふざけんなよ」 「うっせーよ、少し黙っとけ」 腹立つ。だが普段使わない筋肉を使ったのか、異様に疲れてとても眠い。言い返す体力もない。もう寝てしまえと思う。さっきまで硬く握られていた手が髪を乱すのは鬱陶しいが、ぼさぼさになるほど髪は長くないし、ここまでぼろぼろになっていれば、気にならない気もした。 小さく息を吐くと瞼は簡単に落ちてきた。目を閉じる直前、やっぱりと思い直し、撫で続けられている手を叩いた。 傀さんに捧げた祝い品2つ目 青峰のバスケは暴力的。嫌いだけど変えない、変えられないジレンマを抱えてそう PR |
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