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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 光と影が出会ってから一年が経った。正しくいえば季節はまだ冬で、新しい春を迎えていないから一年も経っていない。僕らはまだ、出会って間もないと言えるかもしれない。
 一年。とても短い一年だった。だというのに火神君は、僕の新しい光は昔の光をすべて打ち消してしまった。黄色の反射するような光も、緑の透き通ったまっすぐな光も、青く真昼のような光も、すべて。みんな打ち消してしまうほど彼の光は強く輝いていた。彼は光と一緒にその下にできた影も消している。
 影はない。一番光っていた青い光は消え、その影であった僕もかき消えている。
「かがみ、くん……」
 彼はまぶしい。くらくらするくらい光っていて強い。
 彼の光は輝きを増していく。自らの足下まで照らしていくくらい光っていく。灯台のように影を作る土台すらなくしてしまうだろう。彼はきっと太陽だ。
 いつか、彼の光があの赤い苛烈な光も紫の巨大な光も消し去ってしまったとき、僕は影として存在しているだろうか。いや、きっと消えてしまっている。消えてしまう。
「火神君……いきましょう」
「おう、いくぞ、黒子」
「はい」
 まぶしい光は視界を白く焼いてしまう。だから僕は不能グレアを起こして失明する。盲目になる。
 消えてしまっても構わないと思うほど、影は光に焦がれている。






中学キセキで書こうとしてたけど、かがみんが青峰に勝ったので急遽路線変更。
不能グレアは、まぶし過ぎると何も見えなくなるってことです。医学用語

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 先輩が好きです。
 先輩と一緒にいて、バスケして、昼食食って、そんな簡単なことで心臓が痛くなってどきどきしてて、自分でも訳わかんなくて、でも本当です。だって先輩かわいいし、すごいし、なんかもう、好きだなって感じしかわかんないんです。今日だって気付いた時には先輩のこと目で追ってたみたいで、監督に集中しねぇかって……ん? 笠松先輩だったっけ……? って違う、あの、そんなこともあって、なんでかなってちゃんと考えて、好き、なんだってわかったんです。本当っすよ!? マジで、好きなんです。今だって、先輩の前に立ってんのに足がふわふわしてて、頭ん中なんもなくて、なんだよってなってんですよ。いつもどきどきして先輩の名前だってちゃんと呼べないし、すっげえ悔しくて、そんで、あの、あーもう!
 先輩、好きです。あ、愛してます! 抱きしめたい! キスしたい! デートとかして、手ぇ繋いでほしいし、褒めてほしいんです! そういう意味で本当に好きなんすよ! お願いします、……付き合ってください……。
 ……。
 ……あ。あ、あの、もしかして引いてるとか……? 男だしこんな告白とかキモイとか……。あ、その、すんません。すみません! だって、先輩が好きだって思ったとき告白しなきゃってしか考えてなくて、でも、その、……どう、なんですか? 本当に、こんなこと、でも、どう思ってんですか?
 ねぇ先輩、真っ赤になってないで答えてくださいよぉ!




  ら行なしの告白











別人じゃねえか

拍手[2回]

 自分の爪が彩られていくのを見るのは、不思議な気分だ。食後の昼休み、桃井がマニキュアを取り出した時点で逃げるべきだった。桜井は勝手にパシリに出ているし諏佐は彼女のところ、若松にいたっては修学旅行だ。とりあえず三人とも呪ってやろう。
 鬱々とする自分のことなどきれいさっぱり無視して桃井はマニキュアを塗っている。すでに左手は五本とも赤みの強いピンクに変わっていて、しかもラメでも入っているのか、やたらきらきらしている。切なくなってきた。
「うわ、何だそれ」
「げ」
「おかえりー」
 そして最悪の状況で戻ってくるのは青峰である。若干顔が引き攣っているのが腹立たしい。
「おい、何だよ、それ」
「これ? 新色なのよ、きれいでしょ?」
「んで今吉サンにつけてんの?」
「似合うんだもん」
 その似合うというだけで押し切られたのは自分であるが、呆れた顔の青峰には本気で腹が立った。青峰は購買の残りだろうかパンを二つ持っていた。たしかトイレに行ったはずだと思ったが、途中で桜井にでも会ったのだろう。つまり代わってほしい桜井はまだ戻ってこないということだ。
 程なくして十本の指をすべて塗り終えた桃井にお茶を買ってきてほしいと頼んで追い出す。桃井は満足しているからか快く引き受けてくれた。
「はぁ」
「すげぇな、その指」
「うっさいねん」
「ジャムみてぇ」
「黙っとれや」
 頬が引き攣ったままの青峰を引き寄せて、思い切り額をはたく。右手はまだ乾いていないが左手は乾ききっているようだ。授業前に落としてくれなかったらどうやって落とそうか。
 短く声を上げた青峰にすこし胸がすっとしたものの、またため息をつく。次の瞬間に床に引き倒されたのでさらに気が遠くなる。爪に欲情しやがったかこの野郎と思ったが、覆い被さった青峰にいっても無駄であろう。
 その代わり、キスしようとしてきた口にやっと乾いたくらいの右手を押し込んでやった。あまりキスは好きじゃないのにしてくるこいつが悪いのだ。
「うげ」
 先程本人がジャムのようだと言った爪だが、甘さはなくむしろえぐかったようだ。飛び起きた青峰は外につばを吐いている。爪はそのつばに濡れたのか乾いていたはずの色が潤んで指の付け根まで垂れている。こちらのほうが断然ジャムに見える。
「……ん、まっず」
 ぺろりと舐めた爪はたしかに苦くえぐくまずかった。




指先にジャム
(ざまあみろ)









マニキュアしたことないけど苦いと思う

拍手[1回]

 黒子と喧嘩した。理由はよく覚えていなくて、つまり相当どうでもいいことだったんだと思う。それでも、手を出さなかっただけで丸一時間は口論していたわけだから、やっぱりそれなりの理由だったんだろう。
 ただ言えることは、猛烈に腹が立ったということだ。
「くそっ」
 悪態を付きながら部屋に入ると携帯が鳴っていた。時計はすでに零時を指していて、誰だと思って見れば、見知らぬ番号からだった。
 いらっとして、通話ボタンを押す。不審人物との接触は避けるべきらしいが、今はこの非常識な奴を怒鳴りつけてやりたかった。八つ当たりだが。
「おい、てめぇ誰」
『火神君』
 止まった。器械を隔てて聞こえてきたのは黒子の声だった。先程まで(四時間も前のことを先程と言えるのかはわからないが)あんなに盛大な口喧嘩をした相手から連絡があるとは思っていなかった。
『火神君、すみません、聞こえていますか?』
「……なんだよ」
 散々迷って出た言葉はそれだけだ。何せ真意が読めない。普段の表情でも何を考えているのかよくわからないのに、表情以前にどこにいるのかもわからない状態では尚更だ。それに、本当にさっきまで喧嘩していたのだ。文句をいえば良いのかもわからないし、やはり気まずい。こっちから前向きな世間話をしようという気分にもならなかった。ただの連絡ならさっさと終えたい。……本当に連絡事項だけだったら、それはそれで腹が立つのだが、それは我慢だ。
『助けてください』
「はあ?」
『今家の近くにいるんですが、どうしても足が動かないんです。よければ、迎えに来てもらえませんか?』
「はあ!?」
 なんだそれはと思わず怒鳴る。いったい自分がいない間に何があったんだろうか。動けない程の事態に血の気が引いていく。
『火神君……あの』
「どこにいる!」
『あの、勘違いしないでください。無事ですから』
「いいから答えろ、どこだ!」
『分かれ道です。火神君の家に行く道の』
 上着も取らずに走る。外は冷え込んでいて、明日は雪が降るんじゃないかと思う。この時間に黒子はどこをうろついているんだと思わずにいられない。黒子の家までの最短ルートを考えながら、自分のせいかと頭の片隅で苦々しく思っていた。事故でなければいい、事故でなくて、また昨日のようにバスケが出来るなら構わない。
 足に力を込める。どこまでも速く向かわなければと思いながら、ぎっと奥歯を噛んで悪態を付く。
「黒子のやつっ……あとで絞めるッ」
「それは嫌です」
 びくっとした。変な声が出ることはなかったが、つい思いっきり振り向いた首が痛い。軽い鞭打ちになっているんじゃないかと思う。
 声でまさかと思ったがやはり黒子がいた。いつも通りの表情で塀に凭れている。
「お前っ!」
「静かにして下さい。近所迷惑です」
 よっと立ち上がった黒子の顔の横に手を叩きつけた。必然、壁に押さえつける形になる。壁は冷たかったから俺の手はしもやけになるかもしれない。黒子は普段通り平然としている。
「動けねぇんじゃなかったのかよっ」
「動けませんよ。ここまで来たくせに、足が言うことを聞いてくれないんです」
 意味が分からないと小声で叫んだ。黒子は気にしていないのか、そのまま、呼び出したことを謝られた。また少しイラついた。
 どうやら簡単に話すつもりはないと分かったが出たばかりの家に引き返すのはなんだか格好悪く思える。何せここは家から5分と離れていないのだ。しかも大した分かれ道ではない。
 しかし寒い。自分は風呂上がりなのに防寒なしで飛び出したせいで寒くて仕方がない。黒子がコートを脱ごうとしたが、さすがに着れないから遠慮する。呼び出したくせに黒子はちゃんと歩けるようなので、付いてくるのをいいことに帰路につくことにした。
「何しにきたんだよ」
「……謝りに来ました」

「あんなところでかよ」
「……仕方ないじゃないですか」
 腕で肩を覆いながら睨む俺に黒子が少し目を伏せた。
「たぶん僕が悪いって思って謝ろうと来たくせに、いまさら謝って、これ以上君に嫌われたらどうしようって思ってしまって、動けなくなってしまったんです」
「……あん?」
 理解しきれず反駁して、理解してから固まった。立ち止まった俺を見上げてくる黒子の頬は、夜に冷やされてマフラーの下でさえ赤くなっている。それを見て、はあとため息が出た。
 黒子の頭をぐいっと掴む。そして、そのまま家に押し込んだ。小さく間抜けな「あ」が聞こえたが気にしないことにする。
 扉を閉めれば、外との温度差は一目瞭然だ。暖かくてやっと一息ついた。
 そのまま自室に追いやって黒子の頭を今度はぐしゃぐしゃに掻き回す。冷たいマフラーとコートを椅子に掛けさせれば、やっと抱き締められた。
「あの……」
「あー……、俺も悪かったわ」
 黒子の体も冷えきっている。電話してくるまでにどれだけ待っていたのか。なんだかんだとメンタルの弱いところがある黒子のことだから、もし動けないほどのことが起きているならそれはきっと自分のせいだろう。
 それを言い合う気はないが、伝わればいいと乱した髪を整える。黒子は、やっと力を抜いた。
「そういやお前、喧嘩の内容覚えてるか?」
「いえ、火神君もですか?」
「ああ、……じゃあお前、なんで謝りに来たんだよ」
「……笑いませんか?」
 何故か言いよどんで、黒子は上目遣いに見つめてくる。俺が頷くと、黒子は口元を腕に隠して話し出した。
「帰りに福田君たちに会いまして、また喧嘩したって言ったらもう別れたほうがいいんじゃないかって言われて、その、悔しくなったので……」
 赤面した黒子を見ながら、一瞬、本気でどういうことなのか分からなくなった。しばらくして漸く理解しきる頃には、黒子は呆れられたと思ったらしく、あさっての方向を向いたまま黙り込んでいた。
 福田たちはおそらく悪気なく、からかう感覚でいったんだと思う。俺たちを別れさせるメリットはないし、悪意を向けられるほど険悪な交友関係ではない。黒子もそれはわかっているようで、そのうえで悔しかったんだろう。
「まあ、なんだ……」
 何というか、改めて思う。黒子は実はめちゃくちゃ可愛いんじゃないだろうか。こういう可愛いところを知っているから、たぶん自分は助けを乞われれば飛んで助けに行くんだろう。それが恨めしいとは思わなかった。
「泊まっていくか?」
「……はい」
 ぎゅうっと抱き締める。黒子の体温は低いほうだが、冷えきっている自分には充分暖かい。覚えてもいない喧嘩の理由に感謝した。






仲直りする火黒が書きたかったのです

拍手[3回]

 じとじととした梅雨の時季、たまに晴れれば動きたくなるのは当たり前だ。特に黒子や火神のように若いスポーツマンにとって体を動かせないことほど苦痛となるものはない。
 実際にはつい先日も試合だ練習だと明け暮れており体を動かしていなかったわけではないが、やはり太陽の下でおもいきり動かせるのは気分が違う。雨に洗われた草木の色も気分を高揚させた。
「んで、てめぇがいるんだよ」
「ああ? 文句あんのか?」
「あるに決まってんだろが、ウゼェな」
 そして好きなことで貯まったストレスを発散しようとストリートバスケに及ぼうとしていた。だが、同じように鬱屈とした毎日を過ごしていただろう彼らもこの日を見逃すはずがなかった。運悪く青峰と津川の二人組みと出会ってしまい、黒子が挨拶をしてすぐ火神は青峰とにらみ合いである。
「どけよ、お前なんかがやってたら怪我するんじゃねえ?」
「あ? 寝ぼけてんじゃねぇぞ」
「こっちの台詞だ」
 なんという喧嘩腰だろうか、しかも二人ともうれしそうにしているのだ。
「やるか」
「上等だ、負かしてやらぁ」
 羽織っていた上着をお互いぱっと投げて二人はコートに向かう。格好付けめ。かろうじて受け取った上着を適当に畳みながら、まったくどうしようもないと黒子は嘆息する。口では仲良くする気などないと言っているのに、実際は同等に戦える相手だと知っているためにうれしくて仕方がないのだ、この二人は。
 邪魔する気はないと日陰に足を向けたら、青峰の向こうで口を尖らせて仏頂面している津川に気付く。自分たちのデートが邪魔されたからか、それとも青峰の反応が案に違う方向へ進んでいるのか、なんにしろ不満らしい。当たり前だ。恋人が自分から意識をはずしてばかりいて面白いものがいようか、いやいまい。本当ならば抱きついてでも引き離したいのだろう。黒子自身そうなのだから、きっと。
 しかし津川でさえ自重しているのに、いわんや黒子においてをやだ。臨戦態勢の二人を相手にするなんてしたくない。そもそも殴るならまだしも抱きつくなんて柄にもない。
 木陰に座ってコートを見遣ればバスケットボールを追って火神と青峰はいまだにらみ合っている。そのくせ動きは滑らかで流れるようで、まったくもってつまらない。そもそも楽しんでいる二人は二対二でやろうかとは思ってくれないのだから待っている黒子は暇で仕方ないものだ。
「なんで俺ら、あんなのが好きなんだろーね」
 再び嘆息しようとしていた黒子に津川が近づいてきた。手に持っている青峰の上着は袖が地面すれすれにある。指摘しようかと思ったが、その前に津川は黒子の隣に腰を降ろしたのでやめた。
「青峰君が好きなんですか?」
「だったら何だよ」
「……いえ」
「あーあ!」
 座ったまままるで背筋するように津川は後ろに伸びる。反対に地面に押し付けられている上着に少し同情めいたものが湧いた。雨上がりの青草は落ちにくいのだ。
 津川はしばらくんーっと筋肉を伸ばしていたが、はあと脱力して前屈みになる。ちょうど青峰がダンクシュートを決めたところだった。笑い声と悪態が遠く聞こえる。
「……バスケしたいなー」
「混ざりますか?」
「ええー、やだよ」
 即答され、わかるだろうと忌々しげに一瞥される。まあ、わからなくない。
 二人とも黙ってしまうと、なにやらしんとしてしまって恋人の騒ぎ声すら遠くなったように感じる。季節はまだ梅雨が明けておらず、久しぶりに見た太陽の日差しと若い草木は夏になっているがいまだに夏のにおいはしない。しかも薄暑の今日はじっとりと蒸し暑く、木陰にいてもすこし汗をかきそうだ。もっとも、風のつよい日なので幾分涼やかなほうだ。
 ふわっと黒子を通り過ぎていった風に目を細める。湿気を含んだ風はぬるいが、空気がすこし冷える。やはり夏のにおいというのは感じられず、その代わりに言葉としては聞き取れない声が混じっていた。目を開ければ今度は火神がリングにぶら下がっていた。近いうちにあのリングは壊れてしまうに違いない。
「なあ、なんでたいく座りしてんの?」
「はい?」
 不思議そうに言う津川を向けば、津川の顔は黒子よりすこしだけ後ろにある。日向のほうばかり見ていたからか、一瞬目の前が緑に点滅してくらりとした。
「いや、たいく座りしてんじゃん、暑くなんない?」
「はあ」
 目を強くつむって視界を慣らす。まだかすかに緑や黒がちらつくものの、先程よりは回復してくれたようだ。
 彼の言っているのは体育座りのことだろうかと黒子は自分を見る。まあ、そのような形であるが別に意味はないのだと答えて、津川を真似て足を伸ばす。手を後ろにつくと火神の上着が落ちてしまいそうになったので腹に抱えなおした。
「あーあ、暇!」
「そうですね」
「絶対俺たちのこと忘れてるよ、あれ」
「はい」
 青峰から誘ってきたのにとぶーぶー文句たれる津川に、やはり青峰と火神は似ているのだなと呆れた心持になった。黒子は火神に誘われてここにいるのである。つまり二人とも同じ行動をするくせにお互いは気が合わないのだ、犬猿の仲というものだろうか。
 湿ったぬるい風を再び受けながら、体勢を戻す。後ろ手をつくあの姿勢は存外疲れるのだ。
 なぜ自分が二人のことをつらつら考えねばならぬのかと眉間に皺を寄せたとき、ふと先程の質問を思い出す。津川はなぜ青峰が好きなのだろうか。
 こう言ってはなんだが、青峰は傍若無人で我侭だと黒子は思っている。もちろん素直で実は優しいことも知っているが、基本的に自分を中心に置いた考え方なのだ。津川も我が強いので二人が恋人として付き合えているが不思議だった。
「あの、好きなんですか、青峰君のこと」
「え? うん」
「どういったところが?」
 津川がぽかんとする。分かりにくいかと理由を加えると、ようやくああと考えはじめた。しかし、しばらくもせずに不機嫌な顔をする。
「あんまないかも」
「そうですか」
「うん」
 ぐっと津川も体を起こす。彼の手に握られたままの青峰の上着はようやく地面から浮き上がった。津川はそれこそ体育座りのように膝を抱え、我侭だし、俺様だし、殴るし、暴力的だしと青峰への不満をいう。ボキャブラリーが少ないのか意味は重複するが、よくもまあ出るものだ。
 それでも口を尖らせて言うその表情は拗ねているらしいもので、黙って聞いていればしばしの沈黙を挟んで、でも格好いいのだと続く。自分から振ったのだが惚気られてしまった。
「そっちこそなんで好きなんだ、火神」
「なんでと言われても」
「絶対バカじゃん。バスケバカ。バ火神」
「はい」
 黒子が火神を好いていること前提で話を進めているが、そこは事実なので構わない。そして散々な言われ様だが黒子に否定のしようがない。火神の猪突猛進や日本人離れした行動にため息が出ることはあるし、何より好きなことに熱中して蔑ろにされるのはよくあることだ。構ってもらえないし、恋人としては不平不満もある。
 それでも、好きになった理由など言わずもがなだ。
「かっこいいところ、でしょうね」
「あっそ」
 津川は呆れたように応じ、二人して一緒に吹きだした。お互いに趣味が悪いそっちの方が悪いと笑い合う。
 しばらく笑ってはあと息をつくと、また二人の間には沈黙がおりる。それは別に居心地悪いわけではなく、むしろ何だか気楽だ。思えば最初からそうであった。
「ね、二人にアイス奢らせようよ」
「どうせなら昼飯から全部です」
「あはは、いいね!」
 熱い光の中から怒鳴りあっているような声が聞こえ、構われない腹癒せに木漏れ日でイタズラめいたことを考える。バスケットをしている姿は格好よくて好きだが、構ってほしいのも本当なのだ。火神はすこし黒子を気にしつつ、青峰は盛大に文句を言いつつ、きっと言うことをきいてくれるのだ。
「何食べよっかなー」
「冷房のあるところがいいです」
 目も合わせないでくっくと笑う。滲む汗を拭いながら、たまにはいいかなと思う。蝉はまだ鳴かない、梅雨晴れの午前中。







黒子ってきっと体育座りする

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