ぽたぽた。
WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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≪人体の構造と機能及び疾病について≫
身体の成長・発達に関する次の記述の正誤を答えなさい。 問1。 「『乳幼児の頭囲が大きい場合には、脳性まひが疑われる。』」 「間違いなのだよ。脳性まひは頭が以上に小さいときに疑われるもので、大きい場合は脳腫瘍の疑いがある」 問2。 「『乳幼児の慢性的、かつ病的なやせの原因として最も多いものは、消化不良症である。』」 「それも違う。乳幼児が病的に痩せる1番の原因は先天性心疾患なのだよ」 問3。 「『出生後、肺呼吸が開始されると心臓・血管系に卵円孔や動脈管の形成、臍血管の閉鎖など解剖学的な変化がみられる。』」 「……もう一度言え」 「『出生後、肺呼吸が開始されると、心臓・血管系に、卵円孔や動脈管の形成、臍血管の閉鎖など解剖学的な変化がみられる。』」 「……ふん、違うのだよ。卵円孔や動脈管、つまりボタロー管はすでに形成され、閉鎖するのだよ、臍血管の閉鎖するのはあっているがな」 問4。 「『生後数日間の新生児の体重が減少した場合、重症な先天性心奇形などの疾病が心配される。』」 「違う。新生児は生後数日間は体重が減るものだ。それがない場合に、先天性心奇形を疑うのだよ」 「ちなみに聞くけど、その体重が減るっつーのを正しく言うと?」 「生理的体重減少なのだよ」 答えれば、さっすが! と、目の前で高尾がひっくり返った。 医学生として都内の有名大学に入学して早四年。春のうちに就職先を決定できている俺は近く行われる試験へ向けて追い込みをかけていた。年末年始も変わらない勉強漬けの様子にしびれを切らしたのは、現在ベッドに転がっている恋人で、たまには息抜きしようと言って昨日から俺の参考書をすべて取り上げてしまった。 もちろん激昂した俺は高尾を部屋からも家からも締め出し、その日はノートにまとめた分を見直すことで済ませたが、翌日、こいつのしょぼくれた顔を思い出して、仕方なく、家に来ても構わないとメールをした。 結局、実際に会ったのは久しぶりであるということでお互いの近況情報に花を咲かせ、少し盛り上がった後、ようやく俺は机に戻っていた。一度眠ったためか気分はすっきりしていて、そのころには腰の鈍痛も気にならない程度になっていた。 「これもう真ちゃん完璧じゃない? 試験余裕なんじゃない?」 「馬鹿を言うな。お前が読み上げたのは二年も前の問題なのだよ」 「いやでも、答えが変わるような問題じゃないし」 ベッドで俺の参考書を捲りながら高尾は苦笑する。 俺も頑として譲らなかったからだが、試験勉強をしていると構ってもらえないと不満を言ったこの男は、一時間も経たないうちにこうして自分の使い方を示してくるのだから参ってしまう。口頭問題は字がわからない以上あまり勉強にはならないが、まあ確認にはなる。俺とて高尾と話していたいのは山々なのだ。 「しっかしさ、俺今でも信じらんないんだよねー」 「何をだ」 「何って、真ちゃんが小児科医になるってことだよ! 真ちゃん、子ども苦手じゃん」 ああ、それか。 その疑問については高尾だけでなく周囲の人間、中学時代の先輩後輩や高校時代に関わった人間、果ては親でさえも未だに口にする。俺には無理だと言われたこともある。実際、俺の性格からして、子どものような何を考えているのかよくわからない行動を起こすものは昔から苦手だった。それは二十歳を超えてからより強くなったと思うし、言っていないが、今でも子どもは少し苦手だ。 同時に言われるのが、医者になるというのはなんか納得するな、という言葉。どうやら俺という人間は、頭の固い理系気質で、リアリストで、頑固な行動をする人物だと思われているらしい。 はっきり言って、とんだ思い違いだ。 俺からみた緑間真太郎という人間は、決して現実的な思考回路がないとは言わないが、どちらかと言えばロマンチストである。 俺は運命を信じているし、思い描いた理想を諦めきれないところだってある。ただ叶えたいから努力することを惜しまないだけだ。 「俺ねー、真ちゃんはどっちかっていうと脳外科医とか、そういう意味不明にかっこいいお医者様になるんだろうなーって思ってたんだぜ。それが訊いてみたら小児科って! 冗談だろってなったもん」 「別に隠していたわけではないのだよ」 「うん、わかってる。俺らが訊かなかっただけだしね。でも驚いたって本当!」 ごろんと寝転がった勢いを利用して高尾は起き上がる。参考書は先ほどまで片側がくるんと丸められていたが、いつの間にかきちんと閉じられていた。 「真ちゃんが子どもの相手してるって考えたら、……ぶはっ! 悪ぃ、顰めっ面しか思い浮かばない!」 「馬鹿にしているのか?」 「違うってば! でもさー、絶対に泣いちゃう子もいるんじゃね? ただでさえ真ちゃんデカいんだしさ」 「まあな」 大きさに怯える子どもは必ずいるだろう。大人でさえ、俺を見て驚かないほうがおかしいくらいだ。 だが、俺は、あまり心配していない。 「……どうせ、お前のように俺に向かってくるやつも出てくるのだよ」 「え」 高尾は心底びっくりしたように口を開けて、だが、にへら、と笑う。 「あー……うん、そーかも。真ちゃんって意外とモテちゃうかも」 「ふん。……高尾、子どもに妬くなよ」 「えー俺ちょっと自信ない」 「だからお前は馬鹿なのだよ」 「ひっで!」 高尾がまたベッドふ転がり、げらげらと笑いはじめる。こいつはこれで会社勤めができるのだろうかと思ってしまうのだよ。 「……高尾」 「はぁー……、ん、何?」 「俺は子どもが苦手だが」 「うん」 「……」 「なに?」 「……、可愛いとは思っているのだよ」 「…………は?」 きょとんと高尾が口をあける。大きめの目がぱちりと瞬きするのがやけにはっきり見えた。それにすこしムッとなるのは仕方ない。 「……可愛いだろう」 「え、あ、うん! けどお前」 「いい、忘れるのだよ」 「……ぶっ、もー! 真ちゃんってばもー!」 なぜか高尾がくすぐったそうに笑い出して、追い出してやろうかと思ったが、背を向けることで我慢してやる。 机に向き直れば、手元に広げたページはちょうど出産に関しての例題で、俺は微笑むと同時に切なくなる。 俺はさっき、高尾に告白しそうになった。「俺は子どもが欲しかったのだよ」と、言いそうになった。 言えば高尾は、養子縁組くらいやりそうだ。だが、同性愛者へ子どもを預けるほど、この国の制度は単純ではない。 だが、本心なのだ。 正しく言おう。俺は、高尾の子どもが欲しい。俺は、俺と高尾の子どもが欲しいとずっと思っていたのだ。 高尾和成という男を愛した日から、そのすべてを受け入れた日から、彼と共に一生を過ごすと決意してから、俺は欲しかった。ただ欲しかった。 高尾の子どもを、俺の子どもを、この腕に抱きたいと思っていたのだ。 もし叶うのなら、その子どもは、俺に似るのか、高尾に似るのか。 どうせならよく笑う、高尾に似た子どもがいい。高尾は俺に似たほうがいいと言うかもしれないが、俺は高尾の笑顔が好きなのだ。泣いてもいいのだよ、それ以上に笑うはずだから。騒がしいくらい元気がいい。頭がいいだろうか。俺が勉強を教えてやれば、まあ良くなるだろうがな。高尾と同じで理解力はあるはずだ。運動は得意だろう。バク転を教えてやるかもしれない。 まあどうなっても、きっとバスケが好きになる。大好きになるのだよ。 それならば、俺ほど大きくなるだろうか。それとも高尾くらいで止まってしまうのか。どうせなら高尾は越してほしいものだ。 「ねえ真ちゃん」 「何だ」 「さっきから手ぇ止まってるけど、どうかした?」 「少し考え事をしていたのだよ」 振り向いた高尾は笑いすぎて若干涙をにじませていたが、真剣な声をしている。俺はそれを笑うとポケットに入れていたハンカチを渡してやった。 俺の子ども。 それは夢に見るほどの、医学的に、生物学的に、不可能な願いだった。 俺は男で、どんなに受け入れようとも胎児を宿すような器官はない。それどころか、子どもになることを阻止しているようなものだ。 それを、罪と思うことはある。 それでも高尾といることは、俺にとって幸せなのだ。共にいれるだけで幸せで仕方ない。幸せで、幸福なことで、時々一緒だと言ってくれる高尾の思いが嬉しくて泣いてしまいそうになる。 「ふむ……、おい、高尾」 「なーにー」 「やはり試験にはなんとしても合格するのだよ。集中する。だから」 「うん?」 「笑わず黙るか、出ていくのだよ」 「……はいよ」 「ああ」 ハンカチを受け取った逆の手で、高尾は参考書を渡してくる。俺の部屋には娯楽がないから帰っていいと言ったのだが、高尾は座ったまま出ていく気はないて示している。 それが嬉しくてならないのだ。 俺たちに子どもはできない。我が子を抱くことは、ない。 だが子どもを、いとおしく思うくらいなら許されないだろうか。 その成長に触れることを望むのは身勝手かもしれんが、俺はどうしても願ってしまうのだ。 「俺は運命を信じているのだよ」 「え、何? 何か言った?」 「人事を尽くすと言ったのだよ」 「ああ、はいはい」 私、来週、国家試験があるんだ。 PR |
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