ぽたぽた。
WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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何がきっかけだったのか、たしか、なにか、あったはずなのだが思い出せない。そんな些細なこと。
一瞬でさっと空気が変わった。ざわり、というか、ぞくり、というか。言葉にするとよろしくないが、感じるのは別に嫌な感覚ではない。それはいい意味で通じ合ったということで、むず痒いような、ふわふわしているような、やっぱりむず痒いような、どきどきした感覚だ。 付き合いだして最初の冬、今年最後の部活が終わってから待ち合わせた。いつも通り俺のが早く来ていて、いつも通りにお互いに今日あった出来事をあれこれと話して、寒くって冬だなと思いながら歩いていて。 ああ、それだ。 寒いから、それで、手を合わせたくなって、それだけで心がどきどきして、俺らしくもなくどぎまぎして、口を閉じるともうだめだ。さっきまでなんの問題もなく回っていた唇がもう動かない。じっと黙り込んでしまう。 若松もその変化を感じたみたいで、眉を寄せてマフラーに首を落としてしまった。目つきが悪い人間がそんなことをしたら傍目には不機嫌になったように見えるだろう。 それでも、気まずいわけではないから変な感じ。 言葉が出ないまま歩き続ける。冷えた風が間を吹き抜けるのが寒くて、若松の隣へゆっくりと並ぶ。それは肩と肩が触れ合いそうな距離で、ポケットに入れていなかったら手はとっくに触れていただろう。何も言わないまま二人行きつけの漫画喫茶に足が向かう。 若松が受付を済ませ、俺はそれを黙って聞いている。顔はよく知っているけれど話したことはない受付の男は、ぶっきらぼうになっている若松の態度と、年末という時柄の疲れた様子を見せるものの慣れた作業をてきぱきこなす。 エレベーターがあるのは知っていたけど、必要ないからとゆっくりと階段を登っていく。きちんと鍛えた体にはまったく苦にならない。早く部屋に入ってしまいたいという気持ちと、ちょっと躊躇う気持ちとが会って、自分が緊張しているのがわかる。 「若松……」 「伊月」 「んっ」 ようやく辿り付いた部屋に入ってすぐ、意を決して口を開いた俺と同じタイミング。抱きしめられて口を塞がれる。 体格に差があるまま体を引き寄せられ、振り向いたまま押さえられている肩が若松の胸から鼓動の速さを教えてきた。そっと若松の顔を見上げれば、しかめっ面に見えるだけの、優しくて余裕のない表情。どくどくとした熱さに目を開けていられなくて、舌が動くたびに酸欠状態になりそうで、ぼんやりとしたまま目を閉じる。 一度、唇が離れる。振り向きざまだった俺の格好では合わせづらかったのか、きちんと体を向かい合わされてもう一度。頭の後ろにあった手が動いてきて頬に添えられる。さっきまで外にいたけれどポケットに入れられていたから、手は暖かい。むしろ熱いくらい。 俺はそっと、若松の手に俺の手を重ねる。俺のほうがちょっと冷たいらしく、それだけでじわりと熱が移ってくる。 「……暖房つけようぜ」 「……だな」 ようやくキスが終われば、頬ばっかり熱くて手はまた冷えていて、そもそも上着も脱いでいないという状況に苦笑してしまう。キスしたから変な燻りが出来たかといえばそうでもなく、やっぱりむず痒いような気持ちよさが体中を占めていて、若松も照れくさいのか頭を掻いていて、ジャンバーコートをさっさと掛けて部屋の奥に座ってしまう。 その目が隣を催促するから、なんだか本当に可愛い男だなとまた笑ってしまって。 「飲み物いる?」 「あ? ああ、コーヒーでいいや」 「了解、と。荷物よろしく」 「……おう」 若松が何が言いた気だったけれど荷物だけ置いてさっさと部屋を出る。なんだか悪戯が成功したような気持ちだ。 意地悪したいわけではけではないが、最初に会ったむず痒い緊張はすでに解けていて満足してしまったし、このくすぐったい温かさは熱に埋めてしまうのが勿体無い。もうちょっと、ぼんやりしていたい、俺はそんな温かさに包まれていた。 若松さんがどうしたら幸せになるのかなとか、そろそろ誠凛の先輩方書きたいなとか、誰かいちゃいちゃしろよ!という気持ちの産物 PR |
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