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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 悔しいな。
「やはり……負けるというのは」
 緑間が呟いたそれだけで、もう何も考えられなくなってしまった。
 目が熱い。奥の奥から、炎症を起こしたように痛みと熱があふれてくる。頭が痛くてくらくらする。宮地先輩が泣いてて、木村先輩がそばにいて、キャプテンが、低く、うめいていた。
 呼吸が浅い、ちっとも整わない。首や頬が熱を持っている。痛い、熱い。
 無理やりなき止んで、ずっと鼻をすする。息が詰まった。やっぱり頭がくらくらする。それでも、体は動く。きちんと動いて、同じように泣いている全員と一緒にロッカーへ入る。ユニフォームを脱いで、背番号を見たらやばいと思ってバックに突っ込んだ。
 早く出ようと振り返る。もう動かないんじゃないかってくらい重たい体を引っ張っていけば、廊下にはスタンドにいる部員が、みんな集まってきた。
 ああ、嫌だな。こんな視界が不明瞭でめちゃくちゃなのに、見えてしまう。
 泣いているんだ。キャプテンは、おおきな人だった。図体ではなく、主将として、チームの要としておおきな人だった。厳しい人だったから包まれるような優しさはなかったけれど、それでも、キャプテンがいるだけで安心していられた。俺は絶対に守られた恩返しをするって決めてたんだ。でもキャプテン、副部長と抱き合って泣いてる。大泣きしてるんだ。副部長も泣いてるけど、ずっとベンチにいたから、喉が嗄れてる。
 その後ろで、宮地先輩は叩かれてた。ちくしょうって泣く宮地先輩を叩いている先輩たちもぼろぼろだ。あとできっと殴られる。皆真っ赤な目で、怒鳴りあう。あの人は人一倍努力家で、本気で怖いときもあるけどそれ以上にいつだって優しい人なんだ。そんな人まで泣かせてしまった。
 木村先輩は? つい見渡して、後悔した。先輩は逆に、壁に背中を預けて一人だった。ほかの先輩たちが泣いて木村先輩に向かっていって、木村先輩が泣いているのわかって、唇かみ締めた。あ、でも、マネージャーが一人、隣に座ってくれた。あの人知っている、木村先輩と付き合ってる人だ。
 そして緑間は、
(……真ちゃん。……真ちゃん、真ちゃん)
 緑間は立っている。
 今日は晴れだ。頭を冷やす雨なんて降ってない。だけど豪雨みたいに、応援していた部員が大声を上げて泣く間、声を上げて泣く資格もないというように緑間は立っている。雨がないから言い訳できない。
(あ、……うぁ)
 ああ、嫌だ。見えたらまた溢れてきた。悔しいからだ。俺は、もう泣かせないって決めていたのに。勝ちたいなんて同じだから、なら勝たせてやろうって、緑間をエースにしてやるって。
 勝たせてやれなかった。あれほどの天才が、その力を惜しみなく使ったというのに、泣かせてしまった。ふざけるなと、いくらなじっても治まらない。無力なのは事実、勝敗は覆らない。
 でも緑間が、誰よりも努力家で、自信家で、わがままで、かっこいい、緑間が、泣いてしまったじゃないか。
 悔しいな。
 うん、悔しいよ。
 悔しいさ、ふざけるな。
 いまだに硬く握り締めている手が痛い。爪が食い込むから、違う。血管が引きつるから、違う。悔しいからだ。
(なんで優勝じゃない、なんで勝ってないだ!)
 ベスト4。そんなものは望んでいなかった。そんなものはいらなかったんだ。
 人事は尽くした。先輩も、仲間も、緑間も、最高だったんだ。
 慢心していない。戦意喪失も気負いもなかった。なら努 力を怠った? まさか。全力した。人事を尽くして、天命を待つ。ふざけるな。俺たちには天命なんて、書き換えるくらいの力があったはずだろう。
 怒りがわいてくる。悔しい。悔しくて、悔しくて。涙は出てくる。悲しくはない、ちっともだ。ただ悔しい。全力したのに、勝てなかったその現実に怒りが湧く。
 悔しいな。
(ふざけんな! 何がよくやっただよ! 勝てなかったくせに!)
 勝てなかった。勝たせてやれなかった。
 頭の中を蹂躙するような声は俺の名前を呼び続ける。無力だとなじる。
 よくやったと、誰が言える。秀徳と言う名前を背負って試合に臨んだ者が、三年の先輩を蹴落として、託されて、戦った者が、勝てなかった。ああ、このままでは、俺はバスケが嫌いになりそうだ。


「それくらいでいいだろう」


 あ、と。
 じんわりと、響いたのは音。音。聞き取れなかった言葉が、それでも聞こえたのは、それが、監督の声だったからだ。
 俺たちと同じように、全力してくれた人だからだ。
「全員来い、集まれ」
 監督の声が、今度はしっかりと言葉で聞こえた。塞ぎたかった耳が言葉を通す。思わずまばたきした瞬間、溜まっていた涙がぼろっと落ちで、でも、おかげで視界もクリアになる。
「全員、背筋を伸ばしなさい。いつまで経っても話せないだろう」
「あ……、はい」
「返事」
「はい!」
 異口同音。監督に対する礼儀は秀徳バスケ部の基本だ。それは、どんな時でも変わらない。
「負けたな、……――負けた」
 監督は一瞬目を閉じる。まばたきと何が違うなんて聞かれても答えられないが、それでも分かる。
 負けた。改めて言われて、今度は怒りより辛さが立った。俺たちは、監督を日本一にすることもできなかったんだと思い知らされる。自然と目線が下がった。座る監督の喉のあたり、もはや誰もが押し黙る。涙は止まったがただきつい。
 だが、監督の喉が動く。
「それでも、秀徳は王者だ」
 いや、と、監督は手をあごに当てる。そして躊躇いなく言い換える。

「王者は秀徳だ」

 どきと胸が鳴る。見開いた視界で、監督は前を見ている。
「今日の試合は、全力だった。全員、総力戦だ。しかし負けた。この敗因がわかる奴はいるか?」
「……」
「わかるなら、全員に話せ。どんなに些細なことでも共有し克服しろ。そして、負けた理由がどんなに考えてもわからないなら――――誇れ」
 俺の息が止まる。
 同じように誰も呼吸しない。次の試合の歓声が聞こえるはずなのに、それも聞こえない。
 監督は続ける。心なしか、語りが遅い。
「負けるはずがないほど努力したなら、誇れ。羨む必要も卑屈になる必要もない。胸を張って背筋を伸ばせ。そして、次は勝つ」
 勿論、次もだ。頷いたのか、頭が動くのが見えた。
 音は戻らない。違う、掻き消されている。俺の心臓がうるさいくらい動いているからだ。
「西藤」
「はいっ」
「お前が主将だ。大坪、指導を頼む」
「はい!」
「王者は秀徳だ。来年なんて気の長い話をしてるんじゃないぞ、今から、秀徳は二度と負けない。学校に戻ったらミーティング、練習は明日の朝から、いつもどおり行う。三年も参加しろ。今後メニューは少し変えるが、一日で慣れるはずだ。自分の反省点は家で洗い出して来い」
「……はい!」
 返事をして、三年生も参加するなんてと、可笑しくなった。引退じゃないの?って、勉強大丈夫なのって、苦笑してしまった。
 バスへ促す監督の号令にすぐに全員立ち上がる。あちこちから大きな返事と盛大に鼻をすする音がして、かく言う俺も、目を思いっきり擦ってから立ち上がる。隣では真ちゃんが眼鏡をかけ直していた。近くで見たら目、真っ赤。兎みたい。笑える。ああ、なんか俺らしい。

(王者は秀徳、俺たちが次の秀徳)

 ああ、良かった。
 まだ悔しい。洛山が羨ましいし自分は不甲斐ない。先輩たちと優勝できなかったのも緑間を勝たせられなかったのも、悔しくてたまらない。この敗北は一生忘れない。
 でも、俺、またバスケが好きになれる。


「それから言い忘れたが」
「何ですか?」
「先ほど洛山高校に練習試合を申し込んだ。まだ検討中だが、予定が空き次第、再戦できるはずだ」
「……はあ?」
「仕方ないから、来週は紅白戦を行う。一、二年生対三年生。負けたほうは、うーん、そうだな……勝ったほうの我儘を三回聞くとしよう」
「え」
 耳を疑う。一年も二年も、三年生まで固まっていた。キャプテン、その顔やばい。緑間は理解できてないのかびっくりしてるのか、眉間の皺がなくてなんか可愛い。しかし、気持ちはわかる。監督は今、大量すぎる爆弾を落とさなかっただろうか。
「我儘の内容だが、轢くのはダメだが、まあ、一発芸くらいは許す」
 俺的にはまだ先輩たちとバスケができるんだと思うと嬉しくてたまらないし楽しみだけど、監督、その補足はいらない。キャプテンの後ろで宮地先輩がにやぁって笑い出してる。木村先輩まで悪い顔してる!
「やっべ……ぜってー負けらんないぜ、真ちゃん」
「……望むところなのだよ」
「だよなー」

 緑間が眼鏡を直しながら笑う。俺も笑う。やっぱり俺は、バスケが好きでいる。秀徳が、好きでいる。

 いつの間にか音は戻っていた。あの歓声が俺らのものでないのはきついけど。きっと思い出してうなされるくらい悔しいけど。大丈夫だ。
 王者は秀徳。
 俺たちが、次は勝つんだ。









支部での企画に参加しました。
秀徳のイメージってこんな感じ。実は一番かっこいいのは監督だと信じて疑わない私。本誌では負けてしまいましたね…いえ、わかっていましたが…
緑間が大好きなので緑間がいるだけでテンション上がっていた私としては、黒バス最熱の本当にありがたい期間でした
しかしこの話、モブが多すぎる

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