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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 けたたましい電子音で、試合は終了した。けど、そんな音が彼方に聞こえる。
 しばらく呆けて、そのうち、負けたんだと思ったら、涙が出た。
「……あれっ……あれ……」
 負けた。負けちゃった。
 初めて、負けて泣いた。



 ああ、どうか。
 どうか話を聞いて下さい。
 くだらなくて、どうしようもない、何処にでもあるような事なのですが、どうか。たった一人の人間の話ですが、聞いてほしいのです。

 私は今日、失恋しました。

 私には好きな人がいます。とても可愛らしくて、とても強い子です。勇ましいと言っても差し支えないでしょう。他の人が口々に無意味と言う彼の才能は、しかし私には到底真似できない高尚な才能なのです。
 私は何時からと言うでもなく、彼に恋し、慕っていました。彼の傍には他にも素晴らしい才能を持つ者がいましたが、恋慕とは偉大なもので、彼がいるだけで私は世界のすべてが輝いて見えたのです。

 私は今日、彼の隣に立つ者に、ひどくひどく悪意を持ちました。私になかったものを持っているらしいその者に負けることだけは嫌でした。また、選手としてのプライドの上でも、三年間培ってきた技術の上でも、新参者に負けたくないと思っていました。
 しかし何より、私の愛している人を好いてもいない者に負けるのが嫌だったのです。
 そうです。私が彼を想い続けている今も彼の隣にいる相手は、彼を好いていないのです。
 好意はあります。しかし恋愛感情ではないのです。

 私が彼と共にいた三年間は、楽しく素晴らしかったと簡単に言える物ではありません。彼はその三年間を疎み、倦厭するように離れていったのですから、尚更でしょう。
 それでも共にいたのです。私が想い続けた時間があったのです。


 永遠の運命の赤い糸を信じていたわけではありません。しかし、目先の幸福だけを望んでいたわけでもありません。
 私は常に彼を愛していましたし、彼と同じく特異であったと思います。彼と同じ存在である私以上に、彼に近づける者はいないのだと思っていました。



 この思いを口にできれば、そう思った事もあります。
 ですが私にはできませんでした。私はその告白により、拒絶であれ受諾であれ、彼の特別になることを恐れていたのです。
 なぜなら私は己の感情の醜さを知っています。利己的で自己中心的な心の内を知っているのです。だから誰かの特別になることをよしとすれば、私はその幸福を保持するために誰かを食い殺してしまうでしょう。私は臆病なのなのです。

 その結果、私は光を失ったのです。
 ええ、そうです。影であるという彼の方が、私にとっては光だったのです。彼の消失により私の世界は輝きを失いました。私は彼がいなくてはいけないのです。


 先程、彼に会ってきました。
 そして、まるで呪詛を掛けるように、彼の新しい希望の才能を讃えて気持ちをなじりました。そのせいで彼が傷付くとわかっていて、告げるのです。彼に、同じ事を繰り返しているだけなのだと知らせたかったのです。

 しかし、意味がなかったのです。
 私の愛する人は、私の今までを否定して彼を信じました。傷付くことになろうとも構わないと言うのです。彼を探していた新しい光は、道を違えるはずないと言うのです。
 愚かにもその時、彼らが信頼しあっているのだとわかりました。そこには私の恋のような私情の混ざった感情は一切ないのです。純粋にバスケを楽しんで、バスケを愛しているのです。
 どうぞお笑いください。私は今日、試合に負けて、始めることも出来なかった勝負にも負けたのです。

「……つっ……あーもう……」

 どうか私の心臓の奥からの声が、これ以上響かない事を祈ります。私はこの思いを口にできればと、いつもそう思っているのです。しかしそれはならないのです。

 どうぞ、救いの手を差し向ける事のありませんように。
 私はこの恋に止めを刺さなければなりません。そこには慟哭も、献花も献杯もいらないのです。ただただ、覚悟のみが必要なのです。

「……っくしょ……」


 さようなら、お別れです。
 ここで一人の人間の恋は終わります。


「……ちくしょうっ……!」


 私は、貴方の事が好きでした。










イキシア“秘めた恋”
アヤメ科の小さな花なんですが、可愛いより綺麗な花だなと思っています

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