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ぽたぽた。 WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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 投げたボールはリングにぶつかり、しかし淵を一周して内に沈んだ。一対一、相手だけを見つめつづけているのに予想が外れ、何が起こるかわからないストリートは楽しい。同等ならばなおさらだ、これは黒子とはできない楽しさだ。
 今のゴールで得点は黄瀬より二点勝っている。つまり今日は俺の勝ちだ。
「だああ負けたあ」
「うっしゃあ」
「くっそぅ……」
 がっくりと黄瀬がうなだれる。後片付けとジュースを賭けた勝負だ、黄瀬の落ち込みは大きい。しかし勝ちは勝ちだ。
「ちぇー……火神っち、さっさと出てくっスよー」
「おーう」
 ボールだけは自分で戻してから着替えに向かう。すぐちかくの更衣室に入って、もう少し動きたかったかと首を回した。
 今日のことは以前から約束していたのだが、今日に限っていつも使っているコートはどこも空いておらず、ならばと学校まで足を伸ばした。他の学生やら部員やらがいて結局昼間はできなかったため、どうにもバスケットをしたくてこの時間である。午後をいっぱい使ったからといって、今回のように限界まで動いていないから満足ができない。黄瀬のような上位実力者と試合をしていれば足りなくなるのは当たり前だ。
(まあ、次まで待つさ)
 黄瀬の予定を確認しねえとと思いながら汗だくの服を鞄につめたとき、明かりを消され、暗さに慣れていない目は真っ黒になる。なんなんだ! とびびって振り向くと、月明かりの中、スイッチに伸びているのは見知った男の指。
「おい、黄瀬え!」
「あっははは」
 着替えもそこそこに消えた背中にまったくと軽く舌打ちして追いかける。暗いと言っても校内一角、校舎もまだ照明がついているから完璧に見えないわけじゃない。荷物を掴んで俺も走る。
 闇に眩んだ目はわずかな光源を使って影を追いかける。青々とした植え込みを曲がれば構われたがりの悪戯っ子はすぐ見つかった。逃げたくせに待っていたらしい。にっと口の端を持ち上げるから叩いてやった。
「痛いっスよ」
「知るか」
 言い捨てると黄瀬もふざけて殴ってくる。避けてやればじゃれるように追ってきた。
 校内を完全に出ると、秋口のせいか少し肌寒い。体は走り回って熱いくらいだが、ようやく黄瀬も上着を着た。
「あ」
「あ?」
 黄瀬の間抜けな声につられて声を出す。視線をたどって俺も空を見上げる。そうすれば、目に入った月になぜだか驚いた。
「……す、げぇ」
「……そうっスね」
 黄瀬から漏れた感嘆は俺より落ち着いていた。
「あれっスね、中秋の名月ってやつっスよ」
 やっぱりもう秋なんだと呟く声は聞こえていたが理解していなかった。
 月は特別大きかったわけではない。漫画にあるような青白で幻想的といいわけでもない。ただ完璧な円形をしていた。まん丸の黄色い月が煌々と、夏を残した闇に浮かんでいたのだ。
 雲は動かず、星はあるが見えない。電灯と、月が明るすぎるからだろう、その周りはわずかに夏の青に染まっている。地面へと降りてくる光は銀と言うよりは白っぽく、照らされたところがほのかに発光していた。光が空気に混じってだんだんと夜の涼しさを広げているように見える。青に黄色。金色。月だけが輝いている。息が詰まりそう、だった。
「火神っち?」
「……すげぇな」
 魅了されたみたいに目が離せなくなってしまった。いや、魅了されたのか。アメリカで月は、その美しさから魔性のものとして今でも伝わっている。魅入られるから直視していけないとは祖母から聞かされつづけたことだ。しかし、見てしまったのだから仕方がない。
「月ってこんな明るかったんだな、知らなかったぜ、俺」
「そうっスね」
 ぼんやりした感覚で相変わらず眺めていたら、いきなり黄瀬が吹き出した。怪訝に思って月から目を離すと、げらげら笑っている。でも、とか、だってとか聞こえたが笑い声に消されて意味をなしていない。俺が何かしたかと首をひねるがわからない。
「くっく……火神っちが無駄に風流っつか……ぷふははは似合わないっス!」
 しばらくしてやっと笑いの収まった黄瀬は俺と目が合った。その瞬間、また大笑いし出す。殴っていた。
「ちょ、痛ったいんスけど!」
「うるせえ!」
「えー!」
 かなり恥ずかしい。柄じゃないのはわかっているし、似合わないとも言われたが、腹立つと同時にとにかく恥ずかしい。憎たらしい黄瀬の顔が見えなくて、ジュース買いにいくぞって腕を引っ張る。
「顔真っ赤じゃないっスか! なにそれ火神っちったら可愛いー。ロマンチックきもーい!」
「てんめえええ!」
 馬鹿にするならまだしもきゃらきゃら笑いやがって、笑いすぎてて涙まで浮かんでやがる! あご外れっちまえ。
「よーし、とことんロマンチックにしてやろうじゃねぇか」
「まじやめて! 笑いすぎて死ぬっス」
「上等だろ」
「うお!? え、火神っち?」
 腕を更に引っ張って壁に押し付ける。
「ちょっと、今のまじなんスか」
「……」
 からかって終わるはずだった。だが、追いこんだ黄瀬が思いの外、白くてびびる。月明かりだからだろうか、赤味がなくて綺麗に白っぽく光っていた。
 俺がしゃべらないからか、黄瀬が顔から笑顔を消していく。まだ口に少しだけ残っているけれど、視線が揺れて戸惑っているのがわかる。なのに俺は目が離せない、声が出せない、何も考えられない。おかしいくらいに頭の中が真っ白だ。
 そのまま俺は黄瀬にキスしていた。
「――」
「……っ」
 黄瀬が目を見開く。間近にある眼球は明るすぎて虹彩が揺れるのすら見える。揺れたその光がまた、月のように思えて、焦れたように頭が熱くなる。なんだろうか、また魅了されたのか。沸き上がった感情が何かわからない。ただ、握りしめた手首は思ったより太くて頑丈だ。
 月ははるか高くにある。これは、おそらく、月のせいだ。月が、明る過ぎたのが悪い。月が綺麗だったからだ。

 すべて、月が悪い夜だった。







もはや冬です!秋に間に合わなかった名月記念です!今夜も月が綺麗ですね!(笑)

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