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ぽたぽた。
WJ黒/子の/バス/ケの二次創作BL小説中心女性向同人サイトです
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いつだったか、親父がえらくしみじみと青春について語ってくれた。正直何度も聞いていた話だからウザかったが、そのたびに話される内容はいいなと思った。それこそ漫画にあるような俺たちには縁のない青春だったけど、だから惹かれたのかもしれない。
「ちょ、待ってや」 「無理だろ」 「あっちょ、あかんて!」 「……ちょっと黙れ」 何せ昨今の若い連中の青春はこんな感じだ。普段部活をやってる俺たちはそれなりに充実した青春を送っているのかもしれないが、雨の多いこの季節は何をするにも、場所や時間が限られてくる。まず家から出たくない。だからと言うわけではないが、今、俺たちはゲームに熱中している。 隣が焦った悲鳴を上げる中、俺は構わずに手を動かす。そしてついに、画面から一体のキャラクターが吹っ飛んだ。がくっと意気消沈した今吉の目の前で、俺の使っていたキャラクターが一回転する。これで五連勝だ。 「待って言うたやん!」 「いや、勝負だし当たり前だろ」 「そーやけど!」 きっと睨んできた今吉を宥めながら、ちょっと優越感に浸る。今吉は格ゲーがそう得意じゃないらしい。 「好かんくなるで」 「ウソつけ」 ご機嫌取りに触れるだけのキスをした。今吉はコントローラーを捨てて背凭れにしていたベッドに転がった。ふて寝に近い。 俺は黙って画面を対戦モードからストーリーモードに変え、途中までだったキャラクターのコースを進めることにした。場面をクリアーするごとにゲームオーバーと出るのがちょっと不満だが、それ以外はいいと思う。 しばらくは後ろから動き回る音がしていたが、そのうち本気で寝息が聞こえてきた。眼鏡を外してやりながら悪戯でもしてやろうかと思ったが、あいにく近くにはペンもクリップもなかったから諦める。 「……」 「……」 小さく鳴る今吉の寝息をBGMに、二時間くらい経ったか。後ろで今吉が身動ぐ気配がした。水はと聞けば、長い腕が無言で俺のペットボトルを取っていった。 「もうすぐ終わるぜ」 「……ぁ゛ー……」 酷いがらがら声だ。口開けて寝たのかと思う。ゲームは最終段階だった。 「ゅきお゛……ん゛んっ……ちゅーしたって」 「ちょっと待ってろ」 「……ふん」 ずり落ちるように今吉が隣に降りてきた。空にしたペットボトルを捨ててベッドに凭れかかる。 (これで) クリアーとボタンを連打する。キャラクター同士が大げさな動作で飛び上がり、画面の中心にゲームオーバーの文字が出る。やっぱりちょっと不満だ。強制的に負けた気分になる。 俺が眉を顰めたのと同時に今吉はキスしてきた。応えながらゲーム画面を進める。今吉の頭越しに画面がエンディングになったのを確認し、お待たせ、と俺はコントローラーを手放した。 高校生って、どんな感じにでも自由で自堕落してていいと思うんだ^^ PR
みなさん、相田リコです。
私は今、他校のバスケ部の人から、 「――……きだ。だから、付き合ってほしい」 人生で初の、告白を受けています。 「ごめんなさい!」 空白が頭を占めてから数瞬後、一気に頭を下げる。ものすごく大声で叫んでいたわけだけど、幸い周りに出歯亀するような人はいなかったから大丈夫だと思う。 「そのっ、笠松さんが嫌って言うわけじゃなくって! 私ってそんな美人じゃないし胸ないし、ぜんぜん笠松さんには似合わないから!」 「あ、いや、そんなことねぇと思うけど」 「ああありますよっ! それに私まだ二年だし笠松さん今年から大学生になられるしっ、そうしたら時間合わなくなるし、いままで以上に遠くなっちゃいますし! 迷惑ですから! それに私と付き合ってたら何もできませんよ! 休みもたぶん部活とかいっぱいで会えないだろうし、それってデートとか出来ないってことだし、もっと離れちゃいますし、あ、あと料理も上手くないんですよ私! 裁縫も出来ないし、バスケも、私自身はそんなに上手くないし」 途中から何を言っているのか分からなくなってしまった。というか、もう最初っから何を言っていたのか覚えていない。だって本当に頭の中が真っ白になっちゃった。私ったらすっごく必死で、なんだか頬が熱くなってて、両手で覆ったらますます熱くなった気がして恥ずかしかった。 どうしよう。後ろの方がぐわんぐわん鳴っていて何を言っていいのかぜんぜんわからない。何言っても墓穴掘っちゃいそうで嫌だ。 「……その、だな。もしかして本音はオーケーだったりするのか?」 「――ッ」 悲鳴はどうにか頑張って上げなかった。けど、びっくりしてもう声にならなくって、口とか半開きで固まっちゃってて、たぶんひどい顔になったと思う。笠松さんも顔を、というか目元覆っちゃったし、俯いてる。 「な、なんでですか!?」 「悪い、ちょっと自意識過剰だった」 「そうじゃなくって! なんでそんなこと分かっ、た……~~っ」 言ってから、やばいと口を押さえる。思ったときにはもう遅くて、笠松さんが隠した目元が赤いのが分かる。すごく恥ずかしいから違うって言いたいけど、違わないから否定したくない。 ううぅってなってたら笠松さんが瞑った目を開けた。真っ直ぐで、かあっと真っ赤になる。なにこれ。なんでこの人こんなにかっこいいんだろ? 「俺は、そういうの面倒だとか思わないし、迷惑とも思わない。デートとかしなくても構わないし、料理が下手でも大丈夫だ。好きだよ」 ひゃあうっとか変な声が出そうになる。どうしよう、また言われた。もしかしてまた口説かれてる!? 「ダメです! 本当壊滅的なんです!」 「漫画じゃねぇんだから……」 「漫画なんですよ!」 料理ができるとかできないとか言い訳で、そういう問題ではないんだけどとにかくダメ。食べ物じゃないとかそういうことも一先ず置いておいて、ダメなんだもの。 なのに全力で手をばたばたさせたら、何がダメなんだと笠松さんが首を振って訊いてくる。その動きは流し目したみたいでまたいいなって思って、また顔が赤くなる。落ち着いてよ、私! 「だ……だって、あと一年あるんですよ!? 私たちインハイで優勝できるよう頑張るんですよ? 海常とも試合うかもしれないのに、笠松さんはいいんですか? 私、誠凛しか応援しないのに」 「いや、俺卒業しているし」 「でも、気まずいでしょ!? 私、好きな人に気まずい思いさせるの嫌なんですよ!」 「……~~ッ! ちょ、ちょっと待て、落ち着くからちょっと待ってくれ」 笠松さんが逃げるみたいに目を反らした。肩が細かに震えていて、笑って……違う、悶絶しているみたい。私ったらまた何か口走っちゃったらしい。 十秒くらい歯を食いしばっていた笠松さんが顔を上げる。それから落ち着けるように大きくかぶりを振った。なんだかため息まで聞こえて、一瞬冷たい感じにどきっとした。これは、もしかしなくとも呆れられてる? 「誠凛は、負けたことを応援がなかったことにするのか?」 「そんなことしませんっ!」 つい声に怒気が混じっちゃったのはしょうがない。だってあんまりだもん。 はははって、笠松さんはどこか偉そうだけど嬉しそうに笑った。何か歳上の風格見せつけられてるみたいでどぎまぎしちゃう。でも今、私の中で株は下がりましたからね! ……たぶん。 「海常もだ。負けるのは自分たちが弱かったからだって、ちゃんと分かるぜ。だったら勝敗を気にする必要はない。どちらも全力を出せって応援するよ」 問題ないだろって笑う笠松さんにまたどきんとした。今度はあったいかどきんの方。ずるい! ここでそうやって笑うのはずるい! 「せ、せめて私が卒業するまで……」 「それは無理。無駄にライバル増やしたくない」 はうっ! ああ、でも正論かもって思う。私はそんな事ないと思うけど、笠松さんはモテるだろうから。だって私になんかもったいない人だもん。 「もう一度、いいか?」 笠松さんが訊いてくる。姿勢を正されて、近づかれたわけじゃないけど何だか近づかれた気分になって悲鳴を上げそうになった。わああ、本当かっこいい、恥ずかしいからこっち見ないでほしい。 「……好きだ。付き合ってくれ」 ……ああ、みなさん、相田リコです。どうしたら良いでしょう。 断る理由がそろそろなくなりそうです。 笠リコっていいよね! 乙女なリコちゃん大好きですv
正邦の津川は、嫌な奴だ。
こいつは誰かをからかうことに生甲斐を見出していると言っても過言じゃない。人の嫌がる顔が好きだと豪語して憚らないことが、まずもって厄介だ。そしてそれを裏付けるように試合ではしつこいディフェンスをしてくる。しかも笑顔で。全世界のバスケットプレイヤーを集めたって、笑顔でディフェンスをする奴はこいつくらいなモンだ。 「なー、なーあー、あーおーみーねー」 「あー?」 何よりも自己中で喧しい。周りのことなんてお構いなしにずけずけと物言うし、無駄に上から目線だ。俺が言うな? 俺は俺さまだから良いんだよ。 「昨日、俺、誕生日だったんだけど」 「はあっ!?」 そして突然、こういうことを言い出す。いきなり呼び出しておいて内容がそれなのかと思わず反応すると、津川はにやにやと笑っていた。いらっとした。本当に毎日いらいらするくらい笑っていやがる。 「あは、いい顔した~。てかさ、忘れてた? 俺の誕生日とか覚えてなかった感じ? それちょっとショックなんだけど」 津川が拗ねてみせる。やめろ、ちっとも可愛くねぇ。そもそも誕生日の話は三ヶ月以上前にしたきりだから、なるほど、こいつは俺の気まずい顔を見て楽しみたいらしいらしい。 はっきり言ってむかついたが、少し引っかかる部分があるので思い返そうと黙る。津川は俺が押し黙ったのが嬉しいらしく、にやにやと笑う。ちくしょう、やっぱむかつく。 「おい」 「わっ、引っ張んなよー」 「確かよ、お前の誕生日って今日だろ」 「げッ?」 津川が呆ける。間抜け面はいつもだが、こういう本気で当てが外れたって感じの表情は珍しいから、してやったりって思った。どうやら記憶違いではなかったらしい。大方昨日忘れたんだからと言って飯でもたかるつもりだったんだろう、前はそれで振り回された。 だが、言っとくが、俺はやられっぱなしでいられるような性格じゃない。というか、やられたらやり返すのが常識だろう。 「で。やさしー俺はちゃんと用意してやってんだけど?」 ぎりぎりまで真面目な顔をキープしようと、平常心、平常心と心の中で念仏のように唱えながらプレゼントを突きつける。因みに中身は桃井が猛プッシュしたクマのぬいぐるみだが、買うのも恥ずかししければ店で包装してもらうのも恥ずかしかった。桜井でも連れて行けばよかったんだと後から気付いたのが残念だ。 そんなことを回顧していたら、津川は一瞬怒ったような顔をして、ひったくるように奪い取った。ガキみたいな様子に我慢できずに笑ったが、黙った津川の顔を見て、唖然とする。 「おい」 今回こうして前準備をしていたのは何となくだった。いたずらが失敗したくらいじゃ津川も泣いたりしないだろうと思ったし、こいつの不満そうな顔とか見てみたかったからだ。 なのに、だ。どうしてだか、これは予想していなかった。 「なんで、照れてんだよ……!」 「っ、う、うっさいっ! だって……おまえっ、……あーもーう!」 俺が顔が火照っていくのを感じながら怒鳴ると、もっと早くに赤面していた津川はと叫び声を上げながら顔を隠す。声にならない悲鳴を上げている津川の、隠し切れない耳が真っ赤で、うわっと思った。 一体何があったのか分からないが、津川は真っ赤になってバーカと言いながら縮こまって何故か身悶えている。そんなよく分からない感覚につられたのか俺も顔の熱くなる。 やばい、なんなんだろうか。どういうことなんだろうか。正直に言って顔の熱さが半端ない。可愛いとか思った自分に腹が立ってしかたない。こいつはそんな高度なことできないと分かっているけどもし演技とかだったら殺す。騙されたとか俺どんだけだよ、ほんと殺す。むかついた。 「返せっ、やっぱやらねぇ!」 「やだッくれたんだからもう俺のもんー!」 「うっせぇ寄越せ!」 「やーだー!」 はっきり言って、腕力なら俺の方が上だ。なのに津川が抱き込むから奪えない、というか動きが止まってしまう。 いや、本物にどういうことだよ。なんで俺まで赤いんだよ。ああもう、俺が死ね! 津川は、悪意からくる嫌がらせ や 嫌味からくる同情 にはびくともしない。でも、善意からくる好意に対しては嬉しくってどうしたらいいか分からなくなる。とかね! なるほど青津は可愛すぎる!
季節は秋、空は快晴、背の低い人だかり。
ある日、公園に猫が捨てられてた。 ダンボールの中では、みゃあみゃあと四匹の仔猫が鳴いている。見て分かるし、ダンボールの中には「どなたか、もらってください」なんて書いた張り紙もしてあった。子どもの集まる公園に置いていったのは、無責任な飼い主の微か良心なんだろうか。 しかめっ面になっていた俺の目の前で、女の子が猫を抱き上げる。「白くて丸いからこの子は真珠にしようよ」と言う。その向かいで男の子が「えー、猫はタマだよ」と言っていた。他の子が、黒いもう一匹を撫でながら「こいつは何にしようか」と言う。仔猫たちは楽しむようにみゃあみゃあと応えていた。 しばらくして名前が決まってしまうと、友達がどうしようと言ってきた。見て見ぬふりは誰もできないから、仕方ない。 とりあえず手分けして里親を捜した。みんな自分の親に一応聞いてみて(これはやはり全員無理だった)、近所の猫を飼っている家や学校の先生にも聞いてみた。関わってしまった無自覚の責任感で、一度断られてももう一回言ってみたりした。その甲斐あってか、ただ一人、里親が見つかった。俺のまったく知らない女の人は、みんながタンポポと呼んでいた尻尾の先が白い仔猫を連れて行った。 しかし、その人以外は誰も猫を引き取ってくれなかった。自分の家で飼えないのだからお願いと押し切ることもできなかったんだ。日が暮れてくるとみんな家に帰りたくなるし、それでも帰れないから、どうしようと言い始める。 「ここで育てる? この公園なら、みんな帰りに来れるし、飼ってもいいよね?」 誰かが言った。 「変わり番こに世話して」 「シャケとかあげたらいいもんね」 安直な考えで、順番はどうするのかも餌をどうするのかも決めないで、みんな賛成した。それでももう、どうしようも困ったも誰も言わない。みんな当たり前の事をやっていると思っていたからだ。 一番年上の俺が、明日の朝の餌やりになった。家から牛乳を持ってくればいいかなと考えながら、はっと道路に飛び出して危ないと気付いた。同じことを友達も思ったらしく、また全員でどうしようと考える。 「あそこに入れてあげようよ。あそこなら飛び出したりしないし」 雪という名前になった白猫を撫でていた小さな女の子が指差す方には、埋まった土管があった。そこは自分たちが入ることすら出来ないほどの大きさけど、三匹の仔猫を入れるくらいわけもない。ダンボールよりも安全だと、元々入っていたタオルを敷いて、水とキャットフードも一緒に入れる。猫はジャンプして出てきてしまうから、ほかの男の子が木の板を持ってきた。雨が入らないようにするんだって言って上に被せる。そうして見ると、そこは鉄壁の要塞のようになる。 これなら安心だと、みんなで言った。 朝になって、俺はちゃんと餌やりをした。登校班で学校に行く途中で、忘れ物をしたと言って猫の家に行く。隠していた牛乳パックを開けて皿に流すと、猫たちはゆっくりペロペロ舐めていた。それを確認して、学校に走った。 下校。一度家に帰ってから公園に行くと、女の子たちが何人か土管の傍で立っていた。昨日あれだけ抱いていた猫を誰も抱いていないから、どうしたのだろうと思う。しかし、そんな疑問は近づくとすぐに理解できた。土管の中が空っぽになっていたんだ。屋根は土管の隣に立てかけられていて、牛乳を入れていた皿は洗われている。タオルは近くのゴミ箱にダンボールと一緒に捨てられている。仔猫は一匹もいなかった。 ひどいと誰かが言った。自分のそう思っていたけど、朝ちゃんといたのを確認していたからか、ショックで頷くくらいしか出来なかった。 それから二日くらい経ったと思う。猫のことはまだぼんやり覚えていて(というより、よく似た仔猫を神社の近くで見たとか、いろいろ聞いていたからだけど)何処かにいないかなと帰り道をきょろきょろしていた。そんなことをしていたからか、散歩中のおばさんが「落し物?」と聞いてきた。 毎日同じコースを散歩しているこのおばさんとは、帰る時間が被っているのでよく会う。いつもは挨拶か会釈をするくらいの関係だったが、不審者ではないと知っていたから、俺は猫を捜していたとちゃんと答えた。 「あー、猫はそこら中歩き回るから、わかんないね」 「別に飼ってるわけじゃないしいいんですよ。ただ小さくて可愛かったから」 「ああ、土管に閉じ込められてた仔猫でしょ?」 びっくりした。でもおばさんは俺を見ないで話しつづけていた。 「私この公園通るけど、そしたら鳴いてる声が聞こえてね。見てみたら餌も取れんで衰弱してて、上見たら烏が狙ってたし。可哀想になって私出してあげたのよ」 おばさんはため息をついて、土管の方を見た。俺も釣られて見る。 「誰がやったのか知らないけど、閉じ込めるなんて酷いことをするね」 どきんとして、それでも顔はなんでもないように、少し頷いた。 またおばさんが歩き出したのをきっかけに別れ、まっすぐ公園を突っ切って、おばさんの顔が見えなくなってから走り出す。家までの距離はもうそんなになかったから、全速力のまま部屋に駆け込んだ。布団の中に潜り込んで、枕にぎゅっと顔を押し付けた。 閉じ込めているつもりなんて、なかったんだと。助けようとしていたんだと。思ったけどぜんぜん言えなかった。俺たちの考えが幼く単純すぎて様々は可能性に至らなかったための行動は、愚かだけど非難されるものじゃなかったと思う。幼い正義感を責めるような大人は傍にいなかったし、大人の言うことはつまり、そこにいた四匹すべてを見殺しにしてしまう結果になっていたに違いない。 それでもあの時言えなかったのは、怖かったからだ。 あの仔猫を救ってくれたおばさんに、殺そうとしていた犯人は自分だと知られるのが堪らなく怖かった。猫のことなんて考えてない、自分のエゴで告白しなかったんだ。 「……っ、ぅー……」 ごめんなさいと心で言った気がする。口に出すなんておこがましすぎて、そもそも消えてしまった猫に謝るなんてできない。おばさんに謝るのだっておかしい。あの人も会話したのは今日がはじめてだ。 苦しい、けど何もいえない。だって今も、怖いと思っているだけで涙は出ていない。自分がこんなにエゴイストだと思ってもいなかった。 次の日は、当たり前に来た。女子の何人かが猫の家を壊したのは誰なのかと不満そうに話していたが、俺は昨日のことを言う気にはなれなくて、結局犯人は分からず終いになった。もっとも、俺は猫の救世主の名前を今でも知らないのだけど。 それから何日か経って、猫の話題は消えた。みんな一瞬でも慈しんだのに、いなくなってしまった猫には何の関心も抱いていないらしい。みんなもエゴイストなんだと思ったが、心は晴れなかった。 * * * 目の前で、みゃあみゃあと鳴いている捨て猫を見ながら、過去の苦い経験を思い出していた。あんなに苦しい思いをしたというのに忘れていて、自分のエゴに眉を寄せる。この猫たちが真っ白と真っ黒でなかったら、きっとまだ思い出していなかったと思う。 「かわええなぁ……。なー、笠松そう思わへん?」 「……可愛いとは思うけどよ、……俺飼えねぇし」 デートの途中で立ち寄った公園に子どもの人だかりがあって、捨て猫がいた。今吉はしゃがみ込んで子どもたちと一緒に猫を撫でている。俺は今の今まですっかり忘れていた罪悪感に襲われて、なんとなく猫を直視できないでいた。 「うーん、そうやなぁ……ウチは飼えるかもしれへんけど電車乗らなあかんし、連れて帰れんもんな」 「……仕方たねぇだろ。もう行こうぜ」 居心地の悪い感覚に耐え切れなくて、今吉を引っ張る。今吉は諦めの付かない顔をしていたが、しぶしぶと付いてきた。 だが、すぐに立ち止まる。 「おい……」 「なあ笠松、今日いくら持ってきとる?」 「は? ええと、二万ちょっと……」 「頼む! ちょお貸しとってくれん? タクシー使いたいねん」 「は……」 驚いて固まってしまった。 もっとも、いったい何処へ行くと言うつもりなのかということで固まったわけではない。俺たちはまだ何も買っていないから手荷物が多いわけではないし、これから向かう予定の場所もタクシーを使うような距離ではない。ならば、今までの流れを追えばすぐわかる。 「ならん?」 「いや……いいけど」 「ほんま!?」 ありがとうと礼を言って、今吉はまた子どもたちの輪の中に入っていく。そこから戻ってくる頃には猫を二匹とも大事そうに抱えていた。 「……飼うのか、そいつら」 「ん、飼うで。かわええもん、大事にしたるわ」 今吉は笑う。彼の腕の中で二匹も笑うように目を細める。それに何故かすごく救われた気がして、タクシーに乗ってから(運転手は非常に理解のある人だった)片方を持ってやった。 「すまんの。デートの埋め合わせはいつかしたるわ」 「んなの、いつでも構わねぇよ」 動き回る黒猫を制しながら、ついでにそれまで返済も待っていて欲しいと今吉が困ったような笑顔を見せる。俺はそれはもういいと言った。 怪訝そうな顔になる今吉を尻目に、俺の腕の中でじっとしていた白猫は、みゃあと楽しそうに鳴いた。 前ふり長い!暗い! 22.02.22っていう奇跡に間に合っただけでも奇跡なので許してください。
それは、とてもきらきらしていると水戸部は思った。
小さな悲鳴を上げた春日の目から溢れ出るものは、なんの特別性もないただの涙なのだけれど、その瞬間の水戸部を停止させてしまうには十分だった。彼が泣くという場面に遭遇したこと自体珍しく、それが驚くほど綺麗だったから困ってしまう。 水戸部ももちろん泣いたことがある。悔し泣いたこともあるし、もともと涙腺が脆く、映画や読書でぼろぼろと涙してなかなか止まらなくなることもままあった。もらい泣きだって多い。 ただ、人の泣く姿なんてものは、映画みたいに綺麗なものではない。興奮で顔は真っ赤になるうえ、鼻水も出てくるから、どちらかと言えば汚い。なのに今、膝の上で泣いている春日は綺麗だと思ったのだ。 水戸部はどきどきと鳴る心臓に煽られるように息を呑んだ。春日が美人であるのも要因の一つか。両膝を付いたためにずっと近くなった背中が青空を背負って、彼の目元や両目を押さえつけている手にきらきらとセルリアンブルーを反射させた。頬は健康的な白いから赤く変化しとますます色気が増した気さえした。 そして、一枚の絵を見ているような現実感のない感覚は感動に繋がった。 本当ならすぐ謝らなくてはいけないと思うのだ。たとえ原因が春日にあったとしても、たとえ不可抗力だったとしても、春日を泣かせてしまったのは水戸部なのだ。春日の目元は擦りすぎて赤くなり、さらに水戸部の罪悪感を刺激する。だがそれ以上に、どうかその涙膜の覆いの下にある目をみたいと思った。泣いている間でさえ綺麗な春日にどきどきしている今、それだけで水戸部も泣いてしまうのだとわかっているからだ。 「……」 「うわ、っ……」 視線で訴えっても伝わらないため頬に触れると春日は目を開く。充血した目が一瞬見え、しかし涙が止まらないためすぐに閉じられた。春日の口からはくそっと悪態が漏れた。 その声に意思を取り戻した水戸部は、顔を赤くした。春日を見ているだけで湯気が出ている気がして、隠すために目尻にキスする。 「………………――ッ!」 そして悶絶する。 悲鳴も上げられない程のじんじんとした痛みが舌先からくる。痛い、すごく痛い。泣きそうになる。 つい先ほど使った『痴漢撃退用スプレー』を見つめれば、地面に転がったスプレー缶にはどぎつい色の唐辛子が描かれていた。 春日が泣きながら見つめてくる。口を押さえて見つめ返しながら謝ろうと思った。綺麗だったと伝えるのはその後で、まず謝らなくてはいけない。 そうと決心した水戸部は、未だに溢れつづける涙を拭くためにハンカチを取り出した。 魁リクエストの水戸部受です。 最初はみかん汁(あれ本気で痛い)だったんですが、……テレビの特番の影響力強し。 2月~4月が一番多いらしい\(^O^)/ |
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